Rainbow Dome Musick

Steve Hillage-Rainbow Dome Musick
   ■Artist : Steve Hillage
   ■Title : Rainbow Dome Musick
   ■Label : Virgin Records
   ■Release : 1987(oginal LP release-1979)
   ■Sample :




1970年代初頭より自身のバンドKhanやDavid Allen率いるサイケデリック・プログレッシブ・ロックバンドGongのギタリストとして活動し、現在に至ってはGongの作品にも参加していた妻であるMiquette Giraudyと共にテクノ/トランス/ハウスといったダンス・ミュージック主体のユニットSystem7として活動する、正にサイケデリック・ミュージック界の生き証人、サイケデリック・ミュージックの過去-現在-未来を繋ぐと言っても過言ではない御大Steve Hillageによる79年のソロ作『Rainbow Dome Musick』。

本作は元々1979年のロンドンにて行われた“Mind-Body-Spirit Olympia”というフェスティバルに於けるRupert Atwill出展の作品“Rainbow Dome”内で流すためのサウンド・トラックとして制作された、云わば企画盤であった。しかし90年代以降のクラブ・ミュージックの勃興とそれに伴うアンビエント・サマーと呼ばれたムーブメントの中でHillageの奏でる奔放なる音色とエレクトロニクスを用いた先鋭的なサウンドは当時憂き目を見た多くの革新的な作品と共に再評価の対象となった。

およそ20分にも及ぶ2曲の大作から構成された本作はエレクトロニクスを大胆に導入し、その後に結成するSystem7への布石とも取れるような快楽指数の高いサウンドで極上のトリップを約束してくれる素晴らしいアンビエント作品となっている。それは正にタイトルが示すような虹から零れ落ちた極彩色の音色が生み出す全く新しい“Space Age Music”である。ムーグ・シンセサイザーの伸びやかで悠大なる旋律とフェンダー・ローズの暖かい煌き、水流が静かに溢れ出しチベタン・ベルの瞑想的な音がこだましてゆく。中でも#1“Garden Of Paradise”の終盤辺りから聞こえてくるHillageの奏でるギターの音色は正に極楽を思わせるような幸福感に満ちた楽天的な響きを持っており、天上にスーッと吸い込まれてしまいそうな程に美しく狂おしい。同時代のギタリストといえばもう一人有名なジャーマン・プログレッシブ・ロック界のManuel Göttschingがいるが、彼の代表作でありアンビエント/テクノ界の永遠のクラシックス『E2-E4』が現在でも多大なる評価を得ているのに比べ、この作品に関する知名度や評価は『E2-E4』に比べると正直のところ低いと言わざるを得ない。もし『E2-E4』のサウンドに魅了されたがこの作品は未聴だという方が居られれば是非こちらの『Rainbow Dome Musick』も聴いて頂きたい。きっとあなたを未だ見ぬ素敵な世界へ連れて行ってくれるだろう。


2007 BEST DISC

新年明けましておめでとうございます。2008年も新旧を織り交ぜながら“turn on,tune in”な気分で素敵な音盤の紹介が出来ればと思っていますので『□□TUNE-IN□□』をよろしくお願いします。

昨年は年末ぎりぎりに自宅のパソコンが煙を吹いてぶっ壊れてしまいまして、個人的な年間ベストも更新できないままでしたのでひとまず年間ベストでも。そうそう、今年からはWEB上の投稿型ベスト盤企画、『ECRN AWARD』にも投稿させて頂きましたので、よろしければそちらの方も併せてどうぞ。様々な方が選ばれた年間ベストが見れますので非常に面白いですよ。

業務連絡

10日程前に自宅PCがいきなりクラッシュ。新しいPC到着は年明けになりそうです。
ということで、今年も色々ありましたが皆様、良いお年を。また来年お会いしましょう。

冬至 LIVE

12月22日、冬至の夜に素敵なLIVEがあります。
お近くの方、お時間ある方は是非遊びにいらして下さい。

2007.12.22 (sat)
『冬至 LIVE』
@OTOYA Kobe

LIVE:
沼澤尚(drums)
+
EXPE(space guitar)

YUJI HIROMOTO(Tabla, E.Percussion)
+
SHINOBU(Didgeridoo, Percussion)
+
HAL(Turntable, Electronics)

Candle:
KINYA

〉Door 2,000yen (+1drink 500yen)
〉〉OPEN 19:30
〉〉〉END 23:00
◇CLUB OTO-YA◇
650-0001
兵庫県神戸市中央区加納町4丁目9-14
岩崎ビル地下1階
http://otoya.kobeunderground.net/

Of Beauty Reminiscing

Vikki Jackman-Of Beauty Reminiscing
   ■Artist : Vikki Jackman
   ■Title : Of Beauty Reminiscing
   ■Label : Faraway Press
   ■Release : 2007
   ■Sample:




英国を代表するアンビエント/ドローン作家、Andrew Chalkや彼が所属するMirrorの諸作に於いてゲスト・ミュージシャンとして参加していた女性ピアニストVikki Jackmanの1stアルバムが今年に入りChalk主宰のFaraway Pressよりリリースされた(因みにLPとしては既に昨年300枚限定でリリースされている)。近作ではChalkの作品『Goldfall』(→過去の紹介記事)でも彼女によるその慎ましやかな旋律が非常に印象深かったが本作の『Of Beauty Reminiscing』を聴けば彼女が“ミュージシャン”としてだけに留まらず“アーティスト”としての非凡なる才能の持ち主だという事がわかるだろう。

『Of Beauty Reminiscing』(=美しき追憶)と題された本作は全2曲、およそ35分に渡る作品である。曲数、収録時間ともに若干の物足りなさを感じるが、それでも35分という中で穏やかな変化を遂げてゆく音像に身も心も委ねていると自分の中に流れる時間までもが次第にその速度を落としてゆき、やがては彼女の紡ぎ出す緩やかな時間軸と遡ってゆく追憶の情景に自らも同調していくような不思議な感覚を覚える。先ほど述べた若干の物足りなさとは無論、音楽的なそれではなく少しでも長く彼女の作品に触れていたいという思いからであり、今作で聴く事の出来る音楽はそう思わせるには充分過ぎるほど足る作品である。

また日本盤には邦題もついており#1“Wrapped In Whitenesses”(=白さに包まれて)、続く#2“And Then A Blue Sky Overhead”(=そして、頭上に青空が)と記されている。これらは彼女の中にひっそりと佇む在りし日の光景であり、アルバムジャケットから想像するに彼女の幼少時代の思い出の1シーンなのだろう。冬の朝だけが持つあの張り詰めた空気、目の前に広がる純白の世界、夢中になって作った雪だるま。そして見上げた空は吸い込まれてしまいそうなほど澄み渡り、そこには少女時代の彼女の姿が在る。美しく慎ましやかなピアノの旋律と霧のように朧げな持続音が交錯し追憶の中の情景はまるでスロウモーションのようにゆっくりと動き出し、その中でのみ再び時を刻み出す。

記憶とは非常にデリケートなものである。他者の意思の介在を許さず自らの中でのみ純化されゆくその記憶の中だからこそ、彼女は只ただ美しいシーンを紡ぎそして淀み無き旋律を奏でてゆくのだ。


The Dream

The Orb-The Dream
   ■Artist : The Orb
   ■Title : The Dream
   ■Label : Traffic Inc.
   ■Release : 2007
   ■Sample :
   myspace


The Orbによるおよそ3年ぶりのアルバム『The Dream』。今年の夏にリリースされてから随分と時間が経過してしまったが1st、2ndと紹介しておいて今作を取り上げないのは何ともキまりが悪いので。
今作には往年のパートナーであるYouthも参加しているという事で発売前からの各誌媒体でのインタビュー記事や前評判を読む限り1st『The Orb's Adventures〜』、そして2nd『U.F.Orb』を彷彿とさせるレゲエ/ダブ色の濃い初期回帰作ということで、ファンの期待は弥が上にも高まるわけだが、蓋を開けてみれば「初期回帰作」という一言で括るには少々複雑な作品であり、過去の作品に比べてもより広がりを持ち様々な要素を含んだ「回帰作」というよりもむしろ「意欲作」と取れる作品ではないだろうか。

まず今作にはThe Orb作品にはデビュー当時から馴染みの深いミュージシャンを始め数多くのゲスト・ミュージシャンが参加しており(詳細はTrack List参照)その事が今作の多様な音楽性や楽曲に影響を与えているのは言うまでも無いだろう。中でも驚いたのはヴォーカル曲の多さである。これまでにヴォイス・サンプルを多用してきたThe Orbであるが(勿論、今作でもそれは聴ける)このアルバムには収録曲の半数以上にヴォーカルが起用され、より華やかで多彩な作品に仕上がっている。そしてまた初期を彷彿とさせるレゲエ/ダブの要素も多分に盛り込まれているが、それと共に東洋の旋律やトライバルなビートを取り入れたエスニックな要素もこの作品を語る上で重要なピースであろう。

標題曲でもありアルバム冒頭を飾る“The Dream”はタイトル通り夢心地のメロディーとオーガニックなビートが響き渡る美しくロマンティックな気分にさせてくれる冒頭を飾るに相応しい楽曲である。そして幻想的な女性ヴォーカルが印象的な#4“A Beautiful Day”、Dirty Disco Dubと題されたファンキー&ダンサブルな#5“DDD”、ルーディーで煙たいベースラインと深いリヴァーブが特徴のOrb印のダブ#9"Lost & Found”と、かいつまんで言っただけでも非常に聴き所にも溢れた作品となっている。終盤に向かうにつれよりディープに、そしてリラックスしてゆく展開も一つの大きな聴き所であろう。そして日本盤には特典としてボーナス・トラックが1曲追加されているのだが、これからこの作品を聴こうと思っている方には是非日本盤の購入をオススメしたい。“Let The Music Set You Free”−音楽があなたを解き放ってくれる−と題されたこの曲はボーナス・トラックとして追加された曲ではあるが、まるでこの作品を、否、The Orbというユニットを象徴するかのような素晴らしい楽曲となっている。

The Orbとして9作目にあたる『The Dream』は確かに以前のような獰猛なまでのトリップを求めるタイプの作品ではないのかもしれないが、それ以上にThe Orbの、もっと言うならばAlex Patersonの成熟しきった音楽性を感じさせるユーモラスでこれまで以上に多様性に満ちた作品だといえるだろう。
この作品に対する反応はそれこそ賛否両論あるのかもしれないが、これがThe Orbによる単なる懐古趣味だとは思いたくはないし、過去に対するしんみりとしたノスタルジックよりも未来に向けた楽天的な希望と受け止めたい。因みに本作の正式なタイトルは『the future academy of noise, rhythm and gardening presents... the dream』、人を食ったような長ったらしいタイトルだがAlexがニヤニヤとほくそ笑みながらこのアルバム・タイトルを考えたのかと想像するだけで何だかこちらまで嬉しくなる。


『新人類 FREE RAVE PARTY』

秋も深まる10月に野外パーティーします。
自分達のペースでゆったりやってきたパーティーも今年で早4年目・・・
毎度毎度、様々な人達に協力していただいてます。 ありがとう。
お近くの方、お時間ある方は是非遊びにいらしてください。

新人類-FREE RAVE PARTY  新人類-FREE RAVE PARTY

2007年10月13日(土)〜14日(日)
『新人類 FREE RAVE PARTY』
@龍野野営場 @Tatsuno Yaeijou
兵庫県龍野市揖西町中垣内大成池(菖蒲谷公園内)
Hyougo-ken Tatsuno-shi Issai-chou Nakagaichi Oonariike
(Shoubudani Shizen-kouen)

Open-13th 16:00
Start-13th 18:00
End-14th 12:00

Artists
・FedeboxVOX(ENDORMUSIC/Karne de Pajarito/
  Kibutz del Deseio /From Uruguay - LIVE )
・Hege (極東エキゾチカ)
・ISO (BMB/BAKU MUSIC FACTORY)
・MASAKI (Katakamuna)
・Shimba (katakamuna)
・Univese (From Bulgalia)
・Filippos (From Greece)
・Glen (From Australia)
・matchan (新人類/T.I.T)
・Do-cus (新人類)
・Tomon (新人類)

Deco
・Kinya (新人類)

Bar
・Katakamuna

『∞◎-senpu-◎∞ 』

9月21日、蝋燭灯します。是非遊びにいらしてください。

senpu@otoya  senpu@otoya  senpu@otoya
2007/09/21(FRI)
『∞◎-senpu-◎∞ 』
@KOBE-CLUB OTO-YA

海と山に挟まれた街、ここ神戸を拠点に
それぞれのパーティーを持つアーティスト達が
この日OTO-YAに集結。
大阪よりGYOKU、京都より<比叡山の麓より
命の輪を作りだすtribal jam band>OTOWAを迎え
さらにdeepでearthな空間を。
そんなOTO-YA初となる昼の12:00までのフロアを
MICHIのデコ、KINYAの手作りキャンドルで
異次元空間への旅をたっぷりとお楽しみください!

DJ
MeN (MUSIC FRIED/MOTION)
YANAGIDA (DLIRIUM/Luz Records)
WESSUN (DO-HYO/MIX/Mo'WAVE)
MASAKI(カタカムナ/ Cllystallization)
LIALD (Nautilus/Newtone Records)
MARCO (Nautilus/Mo'WAVE)
GYOKU (q.D.g)
     *
LIVE
OTOWA (village) from 京都
<比叡山の麓より命の輪を作りだすTribal jam band>

ARCHITECT(DO-HYO/MIX)
     *
deco:MICHI
candle art:KINYA
food:NAOKO
sweets:MIKA
shop:DEED <-high quality pure insence-DUMBO>

>DOOR:1500yen
>>OPEN 22:30
>>>START 23:00
>>>>CLOSE 12:00

CLUB OTO-YA
650-0001
兵庫県神戸市中央区加納町4丁目9-14
岩崎ビル地下1階
http://otoya.kobeunderground.net/

U.F.Orb

The Orb-U.F.Orb
   ■Artist : The Orb
   ■Title : U.F.Orb
   ■Label : Mercury
   ■Release : 1992
   ■Sample :
   myspace

1992年リリースのThe Orbの2ndアルバムにして、アンビエント・ダブの決定盤とも言えるのがこちらの『U.F.Orb』である。1stアルバム『The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld』のヒットとセカンド・サマーオブラブ、そしてレイヴ・カルチャーという時代の追い風を受け、こちらの作品は全英アルバム・チャート1位を記録したという商業的に見てもThe Orbの最高傑作の内の1枚であるのは言うまでもないだろう。幾つかのレーベルから様々な国境を跨いでリリースされた作品だがこのMercury盤にはボーナスディスクとして、当時世界で最も収録時間の長いシングルとしてギネスに認定されたという“Blue Room”のフルレングス・バージョン(40分)を含む4曲が収録されている。

この頃のThe OrbはというとJimmy Cautyは既に脱退しており、Alexを中心にYouthやThomas Fehlmann、そして作品ごとに様々なアーティストが参加する流動的なユニットとして活動していた。
まず#1“O.O.B.E.”、フルートの美しい音色と煌びやかな電子音が浮遊する13分にも及ぶ深遠でミステリアスなアンビエント・トラックで静かに、スペーシーに幕を開ける。13分の十分過ぎるイントロダクションを経て、表題曲でもある“U.F.Orb”へ。腰が入った重厚なダンス・ビートにダビーな音響処理、今作でも1stアルバムに続いて非常にダブ/レゲエ色は作品に色濃く出ているが、それに加えてこの頃のDr Alexはケミカル・ドラッグにも相当ご執心だったようで、それを反映してか電子音によるスペーシーな効果音がパキっとしたトビとサイケデリックなトリップ感覚を演出してくれる。そして#4“Towers of Dub"ではゲスト・ミュージシャンのハーモニカの哀愁漂う音色に深いリヴァーブの掛かったダブ処理が特徴の、The Orb作品の中でも1、2を争うほどの非常にルーツ色の濃いエレクトリック・ダブ作品に仕上がっており、こちらはMad Professorによる素晴らしいRemixでも有名である。

最後に、やはりボーナスディスク収録の40分の超大作“Blue Room (Full Length)”について触れない訳にはいかないだろう。この曲にはインタールードを挟んだ幾つかの展開が存在し、ダビーなリズムに印象的な女性コーラスを始め様々なサンプリング・ピースを散りばめた、非常にミステリアスで神秘主義的な色合いの強いサウンドとなっている。またゲストにはJah WobbleやSteve Hillageという素晴らしいミュージシャンが参加し、彼らの演奏とAlex Patersonによるエレクトロニクスを絡めた、その収録時間の長さからもわかる通り、実験的であると同時にまるでこの俗世間とは別の世界を目指すような極めて逃避的快楽志向の強い、1曲40分に渡るロング・トリップが存分に味わえるだろう。
今作ではThe Orbの特徴と言ってもいいユーモアやアイロニカルな笑いはやや控え目だが、それ以上にトランシーでサイケデリックな作品であり、ダンス/チルと双方向に非常にバランスの取れた作品に仕上がっているのではないだろうか。(今作はつい先日にリミックス等のレア音源を加えたボーナスディスク付き2枚組のデラックス・エディションとして再発されている。)


The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld

The Orb-The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld
   ■Artist : The Orb
   ■Title : The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld
   ■Label : Big Life
   ■Release : 1991
   ■Sample :
   myspace

The Orbのおよそ2年ぶりのニュー・アルバム『The Dream』がこの9月にリリースされることとなった。KOMPAKTからリリースされた前作『Okie Dokie It's The Orb On Kompakt』(→過去の紹介記事)はここ数年の間、不調が続いていたかに見えたThe Orbの完全復活作と称された作品であるがそれからおよそ2年、最新作『The Dream』は初期回帰作ともいえるレゲエ/ダブ色の非常に強い作品だということで往年のファンから新しいファンまで、その作品へ向けられる期待は高まるばかりである。
1988年にAlex PatersonとJimmy CautyがThe Orbを結成して以来、多くの作品をリリースしてきたが今回紹介する1stアルバム『The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld』、そして続く2ndアルバム『U.F.Orb』はその時代を、そしてThe Orbというユニットを象徴する作品であると言えよう。
この1stアルバム『The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld』がリリースされたのが1991年、今からおよそ16年前の事である。ここでわざわざ自分が改めて説明するまでもなくもはや多くの人によって語り尽くされたであろう今作だが、2枚組で10曲およそ110分にも及ぶこのアルバムはThe Orbというユニットを代表する1枚であり、時代は流れても今以て変わることの無いThe Orbの何たるかが集約された作品ではないだろうか。

今作はDisc1<Earth Orbit><Lunar Orbit>/Disc2<Ultraworld Probe><Ultraworld>という4部構成の作品となっており、ニワトリの鳴き声で幕を開けるオープニング曲“Little Fluffy Clouds”はThe Orbの代表的な1曲であり美しいメロディと重心低めなリズムが印象的な緩やかなダンストラックである。やはり1枚を通して非常にレゲエ/ダブからの影響が色濃く出ており、もわっとした煙たいベースラインと重厚なリズムが作品の根幹を支えている。それに加えてThe Orbを語る上で忘れてはならないものが、ユーモラスなセンスとそこから得られるオプティミスティックな感覚だろう。
とかくシリアスになりがちなこの手のサウンドの中でもThe Orb(厳密に言えばそれはAlex Patersonによる所が大きかったろう)にはユーモアのセンスがあったし、何よりもトリップというものを熟知していたAlex Patersonなりの楽観主義的な幸福感とユルい笑いがあった。

2部にあたる<Lunar Orbit>の2曲はそれまでのダビーな要素は幾分抑えられ、その名の通り夜を想起させる神秘的で美しいメディテーショナルなアンビエント曲を中心に構成されている。特に14分にも及ぶ穏やかで壮大、果てなき美しさを持つ幻想的な“Back Side Of The Moon”はエクスタシー世代の若者が過剰摂取の果てに辿り着いた月の裏側の世界といった所だろうか。
そして忘れてはならないのが最終章であるDisc2<Ultraworld>の2曲である。特にラストを飾る“A Huge Ever Growing Pulsating Brain That Rules From The Centre Of The Ultraworld / Live Mix MK 10”はその長すぎるタイトルと永遠のソウル・クラシックス、Minnie Ripertonによる“Loving you”をサンプリングしていることでも有名すぎる、正にThe Orbを代表する1曲である。
およそ19分にも及ぶ長尺な曲ながら緩やかな変化の中でスペーシーなシンセサイザーの浮遊する音色に、人の声、動物の鳴き声、波音など何ともユーモラスなサンプリング・エッセンスが巧みにコラージュ&ミックスされ次第に美しいコーラスと共にMinnie Ripertonの“Loving you”のあの印象的なサビのフレーズが聴こえてくる。これは90年代という時代の持つ刹那的な幸福感とその裏にひっそりと隠された憂いや切なさ表現した正にThe Orbを代表する、そして時代を象徴する1曲ではないだろうか。
The Orbを知らない人にまず薦めるならばやはりこの1stと2nd『U.F.Orb』をオススメしたい。
(因みにこの1stアルバムは昨年にボーナスディスクを入れた3枚組アルバムとして再発されている)


Tetra

Philus-Tetra
   ■Artist : Philus
   ■Title : Tetra
   ■Label : Sähkö Recordings
   ■Release : 1998(Repressed-2005)
   ■Sample :




Philusとは、つい先日も紹介したフィンランドが誇る“エンペラー”テクノイズ・ユニット、Pan SonicのMika Vainioによる幾つか存在する変名の1つであり、このPhilus名義では90年代に僅か2枚の12"と1枚のCDアルバムを残しているのみである。今作『Tetra』はそのPhilusによる唯一のアルバムであり、1995年〜1997年の音源を纏めて1998年にリリースされたものの長らく廃盤になっていたが、2005年に突如として同じく彼の変名の1つであるØ名義の作品などと共に再発される事となった。

以前にここでもØ名義の作品を取り上げたが(→過去の紹介記事)、その作品が比較的ダンストラックを意識した作りになっていたのに比べ、このPhilusという名義はどうやら彼にとって“Medical Project”という位置付けであるらしく、実際にサウンドには病院の医療器具を使うというユニーク且つ実験的な手法でもって、非常にエクスペリメンタル/アンビエント色の強い作品を作り上げている。
まず冒頭からまるで潜水艦のソナー音のような不思議な電子音が淡々と響き渡り周囲を独特の空気で包み込む、正にこれぞMika Vainioといった異形のウルトラ・ミニマル・サウンドを展開してゆく。

今作はPan Sonicで聴ける過剰なノイズもØで聴けるようなパキパキとしたリズムも存在せず、極めて微弱なクリック・ビートに奇妙な電子音が飛び交うという非常にアブストラクトなサウンドだと言える。
フワフワとした浮遊感を伴ったスペーシーな電子音についつい耳を奪われがちだが、何よりも、まるでミミズか何かの生き物のようにヌタヌタと地を這いずり回る偏狂的とも言える程の強烈な低音が、聴く者の体を、骨格を、筋肉を、脳を、思考を、精神を、徐々に徐々に揺さぶってゆく。
それはまるで気持ち悪くなる一歩手前のギリギリの気持ち良さ、否、これは気持ち悪い程の最高の気持ち良さを持ったとてつもなく中毒性の高いサウンドなのだ。そう、正にバッド・トリップ・ユートピア。
一聴してMika Vainioのサウンドだと判断できるほどの圧倒的なオリジナリティーとプリミティブな電子音の持つ病的でアシッドな感覚を併せ持った傑作アルバム。


Katodivaihe / Cathodephase

Pan Sonic-Katodivaihe
   ■Artist : Pan Sonic
   ■Title : Katodivaihe / Cathodephase
   ■Label : Blast First Petite
   ■Release : 2007
   ■Sample :
   myspace

フィンランド出身、現在はベルリンにその活動の拠点を置くMika VainioとIlpo Väisänenによる孤高のエクスペリメンタル・テクノイズ・ユニットPan Sonic。常に聴く者の聴覚/意識を刺激し、またそれに挑戦するかのようなアグレッシブなサウンドと気高き実験精神で作品ごとに様々な変化と自らの活動のアップデートを図ってきた彼らが、2004年にリリースされた驚異の4枚組アルバム『Kesto』(→過去の紹介記事)以来およそ3年ぶりにニュー・アルバム『Katodivaihe / Cathodephase』をリリースした。

今作でも彼らのその圧倒的で唯一無二のサウンドは健在。それに加えてゲストとして女性チェロ奏者のHildur Guðnadóttirが14曲中、3曲に参加している事もあってそのサウンドに様々な変化をもたらす事となっている。#1“Virta 1.”は、まるでコンクリートの壁を打ち鳴らすかのようなPan Sonic特有の冷んやりとしたビートにHildurのチェロが生温かい空気を放ちながら妖しく不穏な音色を奏でるという、官能的で奇妙な温度感を持った1曲となっている。それはこれまでの作品でPan Sonicが意識的に排除してきたような生々しい感覚であり、間違いなく今作に於ける一つの大きな変化でもある。

そしてその後はPan Sonicお得意のまるで金属塊が激しくぶつかるようなヘヴィー級のインダストリアル・ノイズを絡めた#2“Lähetys”、#3“Machinist”から、浮遊感を保ちながら淡々と突き進むクールでウルトラ・ミニマルな#5“Laptevinmeri”、Hildurが参加した#1とは打って変わって奇妙な電子音や摩擦音に捉えどころの無いチェロの音色がぼんやりと浮かび上がってくる極めて実験的で抽象的な9分にも及ぶ#8“Suhteellinen”、そして何と言っても高い緊張感と圧倒的な音圧のメタリック・ノイズに地上を這うような分厚い極低音ビートが深く強く轟く#11“Hinaaja”から#13“Leikkuri”への展開は非常にスリリングでこの作品のハイライトとも言えるであろう。
このアルバムに収録されているそのどれもがPan Sonicらしい非常に刺激的で、また実験的で、そして革新的な楽曲が揃い、過去のこれまでの作品を総括し更なる高みへ昇ろうとする彼らのハードでストイックな音響美学が存分に味わえる至高の1枚となっている。