Tetra

Philus-Tetra
   ■Artist : Philus
   ■Title : Tetra
   ■Label : Sähkö Recordings
   ■Release : 1998(Repressed-2005)
   ■Sample :




Philusとは、つい先日も紹介したフィンランドが誇る“エンペラー”テクノイズ・ユニット、Pan SonicのMika Vainioによる幾つか存在する変名の1つであり、このPhilus名義では90年代に僅か2枚の12"と1枚のCDアルバムを残しているのみである。今作『Tetra』はそのPhilusによる唯一のアルバムであり、1995年〜1997年の音源を纏めて1998年にリリースされたものの長らく廃盤になっていたが、2005年に突如として同じく彼の変名の1つであるØ名義の作品などと共に再発される事となった。

以前にここでもØ名義の作品を取り上げたが(→過去の紹介記事)、その作品が比較的ダンストラックを意識した作りになっていたのに比べ、このPhilusという名義はどうやら彼にとって“Medical Project”という位置付けであるらしく、実際にサウンドには病院の医療器具を使うというユニーク且つ実験的な手法でもって、非常にエクスペリメンタル/アンビエント色の強い作品を作り上げている。
まず冒頭からまるで潜水艦のソナー音のような不思議な電子音が淡々と響き渡り周囲を独特の空気で包み込む、正にこれぞMika Vainioといった異形のウルトラ・ミニマル・サウンドを展開してゆく。

今作はPan Sonicで聴ける過剰なノイズもØで聴けるようなパキパキとしたリズムも存在せず、極めて微弱なクリック・ビートに奇妙な電子音が飛び交うという非常にアブストラクトなサウンドだと言える。
フワフワとした浮遊感を伴ったスペーシーな電子音についつい耳を奪われがちだが、何よりも、まるでミミズか何かの生き物のようにヌタヌタと地を這いずり回る偏狂的とも言える程の強烈な低音が、聴く者の体を、骨格を、筋肉を、脳を、思考を、精神を、徐々に徐々に揺さぶってゆく。
それはまるで気持ち悪くなる一歩手前のギリギリの気持ち良さ、否、これは気持ち悪い程の最高の気持ち良さを持ったとてつもなく中毒性の高いサウンドなのだ。そう、正にバッド・トリップ・ユートピア。
一聴してMika Vainioのサウンドだと判断できるほどの圧倒的なオリジナリティーとプリミティブな電子音の持つ病的でアシッドな感覚を併せ持った傑作アルバム。