Goldfall

Andrew Chalk-Goldfall
   ■Artist : Andrew Chalk
   ■Title : Goldfall
   ■Label : Faraway Press
   ■Release : 2007
   ■Sample :




MirrorやOraといった伝説的なユニットにおいて時にダークサイケデリアな音響作品、そして時に神的なまでに美しくスピリチュアルなドローンを多く残してきた英国ドローン/アンビエント界の重鎮、Andrew Chalkによる新作(厳密に言うならば一昨年にリリースされた同タイトルのLPがCD化されたものである)が自身のレーベルFaraway Pressよりリリースされた。今作ではChalkとは旧知の仲であり、過去にMirrorの作品にも参加し自身もFaraway Pressより作品もリリースしている女性ピアニストVikki Jackmanがゲスト・ミュージシャンとして名を連ねている。

全2曲、およそ45分に及ぶ本作はVikki Jackmanによるピアノの残響音が美しく広がり、またこだまし、例によって過剰な展開や起伏は多く存在しないが45分という時間をかけてゆっくりと流れるように形を形成し、穏やかな展開を繰り広げる非常に瞑想的なアンビエント作品となっている。
それらはまるで蝋燭の炎が静かに揺らめくように、柔らかく、そして暖かな包容力に満ちている。
今作に収録されている2曲ともタイトルは無題(=Untitled)とされているが、言い換えれば聴者にそれらのイメージを全て委ね、聴者が自由に想像し、自由に解釈をし、そして如何なる形にも変容し得る非常に懐の深い作品だと言えるだろう。

なお今作も手作りだというジャケットのアートワークは非常に美しい仕上がりとなっており前作にあたる『Vega』と同様、和文様をモティーフとした淡い色合いの風情漂うデザインが印象的である。
因みにインサートには彼自身が鉛筆で1枚1枚書いたと思われる直筆サインも同封されている。


Pisin Jaz From Mobile Station Radio

Woodman-Pisin Jaz From Mobile Station Radio
   ■Aritst : Woodman
   ■Title : Pisin Jaz From Mobile Station Radio
   ■Label : 360°Records
   ■Release : 2002
   ■Sample :




Woodman・・・・驚く事に30歳という年齢を越えてから本格的に音楽制作を開始したというこの奇妙な名前の男が作り出す音楽は何とも個性的で魅惑的で、それでいて不思議な魅力に満ちている。
自身のレーベルRare BreezzからはCDr作品をリリースし、その他にも様々なコンピレーションにも楽曲を提供、更にカセットテープという媒体を用いた作品も数多く残してきた彼の作品カタログを全て把握しきるのは相当なファンでない限り容易なことではないだろう。

今作『Pisin Jaz From Mobile Station Radio』は2002年、東京の360°RecordsよりCD作品として広く流通した内の1作であり「ジャズ」をエッセンスにダブやディープハウス、ラウンジからブレイク・ビーツ、ワールドミュージック、果てはエクスペリメンタルな音響アンビエントまで非常に雑食性の高い、しかし方々に散らばった様々な音のピースががっちりと組み合わさったかのような奇妙な統一感を伴ったアルバムに仕上がっている。

しかし何度聴いても不思議な音楽である。もしもこの音楽を一言で表すのならば「ストレンジ・ベッドルーム・ミュージック」というところだろうか。適度にリラックスした空気が独特のゆるさを放っている。
しかしここで聴くことの出来る音色はベッドルームにある小さな窓から飛び出し遥か彼方、世界の様々な空気と共振することの出来る音なのである。エレクトリックでありながら非常に有機的でもある。そしてまた土臭くもありながら極めて都会的な洗練さも併せ持っている。
・・・やはりこれは何度聴いても“不思議”な音楽である。


Showcase

Acca-Showcase
   ■Artist : acca
   ■Title : Showcase
   ■Label : Rudiments
   ■Release : 2004
   ■Sample :




accaとはKinkaとNoriという二人の日本人により結成されたこの国のオルタナティブでアンダーグラウンドなダンス・シーンを支えるユニットである。KinkaはDJ ZeekoとのユニットKey of Knowledge、MoochyとのユニットMonkaなどでも活動し過去にはSound ChannelやEquinoxから作品をリリースしていたアーティストであり、2002年にNoriと共にこのaccaとしての活動をスタートさせた。またaccaとはギリシャ語で『水』を意味し、その言葉が示す通り彼らは『水』、そして『ダブ』という二つのキーワードに焦点を当てた作品を発表しているコンセプチュアルなユニットでもある。

今作『Showcase』は数枚のEPの後に2004年にRudimentsよりリリースされた1stアルバムである。
水とダブをテーマに掲げるユニットだけあってサウンドは水流のサンプリング音に始まり、まるで亜熱帯のジャングルを思わせるような過剰なまでの湿度を孕んだ音響処理が特徴的である。それらに加え奥行きを感じさせる空間的なエフェクトが絡み変則的でアブストラクトなブレイク・ビーツ/ダウンテンポからミニマルで覚醒的なダンストラックまでをも自在に行き来する作品となっている。

中でも後半#6から#7を経てラスト#8にいたる流れはアルバム中のハイライトと言えるであろう。
ミニマルな展開と華麗なディレイによって非常に引っ張りの強いダンストラックに仕上がっている#6“Whirlpool”、楽天的なピアニカの音色から後半でのスペーシーなシンセがまるで水面に波打つ波紋のようにジワジワと拡がり見せるヒプノティック且つドラッギーな#7“Vapour”、そして地表すれすれを行き交う低く重いトライバルなリズムと図太いベースが絡むスモーキーな#8“Sprinkle (Hydrodyna mix)”と、フロアに忠実なテンションを保ちながらアルバムは幕を閉じる。
それぞれの楽曲ごとに様々な個性を放ちながらも先述したように彼らの一貫したテーマでもある『水』そして『ダブ』という要素を存分に味わい感じる事の出来る作品となっているだろう。