Blue Shift Emissions

Christ.-Blue Shift Emissions
   ■Artist : Christ.
   ■Title : Blue Shift Emissions
   ■Label : Benbecula Records
   ■Release : 2007
   ■Sample :
   myspace.com

元Boards Of Canadaの〜、という飾り文句はもはや必要ないだろう。スコットランドはエディンバラ出身、Boards Of Canadaの二人とは『Twoism』を最後に袂を分かち自らレーベル『Hyperact』を興す側ら、生まれ育った歴史深い古都エディンバラを拠点に活動するChrist.ことChristopher Horne。
彼の2ndフルアルバム『Blue Shift Emissions』が当初のリリース予定だった2006年夏よりもやや遅れる形で2007年に入りようやくBenbecula Recordsよりリリースされた。

2003年にリリースされた1stアルバムでは以前より彼が好んで使用しているというムーグやアナログシンセ、ドラムマシンといった所謂“時代遅れ”なテクノロジーを用いて作られたローファイで暖かみのあるサウンドがラップトップ主体のエレクトロニック・ミュージックの世界の中で静かながらも確かな楔を打つ事となったがそれからおよそ4年、今作に於いてもその魅力的なサウンドは健在である。
彼が音楽制作において最も重きを置くというメロディーに関しては今作でも印象深いラインが幾度となく登場し、単に“メランコリック”や“ノスタルジック”という一言で片付けてしまうには余りにも多くの感情を孕んでいるように感じられる。更に今作ではリズムが遥かに強度を増しており、揺さぶるような歪んだビートが時折ノイジーとさえ感じられる程であり、曲を引き締める役目を大いに担っている。
そして霞が掛かったような独特のザラついた質感の音響処理に加えて壮大なスケールで描かれるサウンドスケープは何時しか過ぎ去りし神話の森の中に迷い込んだような不思議な錯覚に陥る。

彼の作る神秘的で秘密めいたサウンドには彼の出自であるスコットランドを含めたケルト文化圏に於いて現在も僅かながらに息づく自然崇拝や精霊信仰といった近世とは逆行した世界観や価値観が少なからず影響しているように感じられる。彼のサウンドを語る上でよく用いられる“ノスタルジック”というキーワードには単なる彼の中に実存する記憶に対するものだけにではなく、むしろこういった神話が息づいていた時代に対する強い憧憬の想いが込められているのではないだろうか。