Zero Set

Moebius.Plank.Neumeier-Zero Set
   ■Artist : Moebius-Plank-Neumeier
   ■Title : Zero Set
   ■Label : Sky Records
   ■Release : 1982
   ■Sample :




1970年代初頭に始まったとされるジャーマン・プログレッシブ・ロックと呼ばれる音楽は並外れた実験精神とその独自の音響工作、そして当時の先端を行くエレクトロニクスを駆使し、それまでの「ロック」という規範から積極的に逸脱した多くの怪作を生み出した。
時を経て90年代に入りテクノ・ミュージックの盛り上がりと共に、70年代当時の破格に実験的なサウンドはテクノやポスト・ロックの始祖、または源流として再び多くの人からの注目を集める事となり、特にここ数年では当時の作品がリマスターされ再発されるという動きが目立っている。
本作もその内の1枚であり当時のLPを意識した紙ジャケット仕様に一新され2月25日に発売される。

この作品はユニット名からも分かる通りClusterのDieter Moebius、Guru GuruのMani Neumeier、そしてジャーマン・ロック界きっての凄腕プロデューサー/エンジニアCony Plankの3人からなる“その道のスペシャリスト”(つまりは変態)による当代きってのユニットでありこの1982年にリリースされた『Zero Set』はまさにテクノの源流としての流れを最も色濃く感じられる極めて刺激的な作品である。

まさに人力テクノと呼ぶに相応しいサウンドだが特に冒頭の#1『Speed Display』はNeumeierによる正確無比、強烈で力強い人力ドラミングが炸裂するこのユニットの代表曲と言っていいだろう。
そこにはMoebiusによる無機質ながら浮遊感に富んだ奇妙な電子音が絡み、反復を刻んでゆく原始的なリズムに呪術的な陶酔感を与えている。躍動感に満ち溢れた生ドラムによるビートはこの作品の中でも最も印象的で効果的、おそらくドラムマシンで打ち込まれた音ならばここまでの肉体性や生々しさ、そして迫真のグルーヴは生まれ得なかっただろう。
その後の展開でもエクスペリメンタルな電子音が飛び交う中を生ドラムが疾駆するという狂演が繰り広げられ、ドイツらしい硬質で乾いた感覚の中にアシッディで歪んだエッセンスを盛り込んだサウンドを聴く事ができる。およそ25年前にリリースされた本作は、今以て当初と変わらない非時代性を持ったままこの2007年にも異質な光を放っているだろう。