Two Times Five Lullaby
... 2006.10.30.[Mon]

■Artist : Rickard Javerling
■Title : Two Times Five Lullaby
■Label : Yesternow
■Release : 2006
■Sample : ♪

スウェーデンはストックホルム出身、これまでスコットランドやアイルランドなどヨーロッパ〜北欧諸国を放浪しフォーク・ミュージシャンとして生計を建てていた、という何やら興味深い経歴を持つマルチ・インストゥルメンタリストRickard Javerling。
そんな彼のデビュー・アルバムはまだ新しく生まれたばかりのUKのレーベルYesternowより。
彼の経歴からもわかる通り、このアルバムはトラディショナルなフォーク・ミュージックを基調としながらフィールドレコーディングやエレクトロニクスをさらっと隠し味程度に盛り込み、ギター、ブルースハープ、バンジョー、アコーディオン、ハモンド・オルガンといった非常にアコースティックな演奏を主体としたインストゥルメンタル作品である。
彼自身はロックからアンビエントまで幅広い音楽からの影響を語っているが実際にサウンドに色濃く出ているのは、やはりブルーグラスやカントリーといったアメリカン・ルーツ・ミュージックに代表される古き良き時代の音楽であり、それらの音楽の持つ土臭くも長閑な空気を残しながらポスト・ロックを感じさせる現代的な音響プロダクションを嫌味なく施している。
爪弾かれるアコースティック・ギターの音色は懐かしくまた芳醇な香りを運び、切ないハープの音色はいつか見た光景を思い起こさせる。
ホーンの伸びやかな演奏は透き通った蒼い空に駆け抜けるように響き渡り、ピアニカの朴訥とした響きは胸の奥のノスタルジーをそっと撫でる。
とにかく鳴り響く音色は限りなく優しく澄み渡り、流れる空気はどこまでも穏やかに拡がってゆく。
これはそんな作品である。
夏の熱気が次第に過ぎ去り、いつの間にか冷たく感じられる空気が穏やかな秋の風を運ぶように、彼の作る音楽は深まり行く秋の音色を静かに感じさせるだろう。
Patience
... 2006.10.29.[Sun]

■Artist : Another Electronic Musician
■Title : Patience
■Label : n5MD
■Release : 2006
■Sample : ♪

アメリカ在住、Jase RexによるAnother Electronic Musician(=もう一人の電子音楽家)という少し変わった名前のアーティストの2ndアルバム『Patience』。リリースはアメリカはオークランドを拠点に良質なIDM/Electronica作品を立て続けにリリースし、正に現在ノリに乗ってるレーベル、n5MDより。
n5MDといえば明確なビートを打ち出した正統派IDMスタイルを継承するレーベルという印象が強いが本作で聴く事の出来るサウンドはそういったスタイルを踏襲しつつ音像は極めて不鮮明で抽象的、かなりエクスペリメンタル色の濃いアンビエント・トラックがアルバム中を占めている。
そしてそれはアルバム冒頭を飾る#1『Walking At Noon』、そして続く二部構成となった大作#2『Within Reach』、『Kinematics』への展開が象徴的に物語っているだろう。
プチプチと細かな粒が弾けるように様々な微細音が散りばめられたデジタル・ノイズ、そしてその背後に微かに鳴り響くドローン・サウンド、それらの波が押し寄せる中、重厚で鈍いリズムがゆっくりと迫り来るように展開していくという非常にアブストラクトなトラックとなっている。
その後も不穏な空気を感じさせる暗く重い展開が続くが壮大なスケールで展開されるシンセ・ワークは重厚なハーモニーで美しいアンビエンスを感じさせ、非常にドラマティックな盛り上がりも演出している。ビート同様、際立ったメロディーが存在するというような曲はないが時折現れる美しくも物哀しいメロディーに思わずはっとさせられる、地味に素敵な1枚。
Refined
... 2006.10.28.[Sat]

■Artist : Portral
■Title : Refined
■Label : Headz
■Release : 2006
■Sample : ♪

2005年一杯を持って惜しくもその活動に終止符を打った東京発のインディペンデント・レーベルOneowner Records。個性的で一癖も二癖もあるアーティストの作品をリリースしアンダーグラウンド・シーンに確かな足跡を残したそのOneowner Recordsの主宰者であり自身もInner Scienceとして作品をリリースしていたMasumi Nishimuraがレーベル閉鎖後、新たにノンビート・プロジェクト−Portral名義による1stフルアルバム『Refined』をHeadzよりリリースした。
Inner Scienceとしてはエレクトロニカ以降を感じさせる新世代の音響ブレイク・ビーツとでもいえるような作品を発表していたが今回のPortral名義では一切のビートを排除したノンビートの静謐で美しいアンビエント・ミュージックを披露している。ほぼ完全にレコードからのサンプリング音源を加工する事のみで制作されたという本作は、ヒップホップにおける常套手段ともいえるサンプリングによって−言い換えればひどくアナログな手法によって−しかしながらヒップホップを音楽的ルーツに持つ彼だからこそ出来た全く新しいアプローチによる新鮮なアンビエント・ミュージックである。
サンプリングによって得られた「柔らかな質感」は彼自身のドローイングによるジャケットのアートワーク同様、非常に淡い色合いの無垢なサウンドであり、ゆっくりと変化を遂げる音像はスピーカーから放たれた音の粒が次第に周囲の空間へと滲むように拡がり溶け込んでいくようでもある。
有機的でほのかな暖かみがを感じとれるのは彼自身の人間性によるものだろうか、静謐で繊細なサウンドでありながらどこかノホホンとさせられる瞬間がたまらなく心地よい。








