Big Soup

Luke Vibert-Big Soup
   ■Artist : Luke Vibert
   ■Title : Big Soup
   ■Label : Mo Wax
   ■Release : 1997
   ■Sample :
   myspace.com


活動初期からのメイン名義であったWagon ChristをはじめAmen AndrewsやPlug、Kerrier Districtなど幾多の名義を使い分け、様々なレーベルを跨いで作品をリリースするLuke Vibert本人名義による記念すべき1stアルバム『Big Soup』。リリースは1997年、当時数々のブレイクビーツの秀作をリリースしていたMoWaxより(因みに日本盤Toy's Factoryからリリースされたものは2枚組となっている)。

ビートの魔術師、鬼才などと謳われる通り彼の作る小気味良いブレイク・ビーツ作品はオリジナリティとユーモア、そして独創的なアイデアに満ちている。この作品は'97以前にリリースしていたWagon Christ/Plug名義でのサウンドの延長線上にある初期の集大成的な作品であるといえるだろう。(どちらかといえばWagon Christ名義での路線をさらに推し進めた印象が強い。)

サンプリングを駆使し彼のルーツである60〜70年代のムード音楽やイージーリスニング、ジャズをはじめとしたブラック・ミュージックからの影響も色濃く感じられるラウンジ色の強いダウン・テンポからソリッドでエッジのたったビートにアシッド風味に味付けを施したブレイク・ビーツまで、実にユーモラスにそして少しばかりのシリアスさを良い塩梅で組み合わせ幅広いサウンドを聴かせてくれる。
まさに大きな鍋に様々な具材を放り込みグツグツ煮込んでしっかりと味が滲み出たブイヨン・スープのような音楽といった形容が相応しいだろう。
音の一つ一つは時に非常に個性が強く奇天烈でトリッキーなものが多いが流れるように展開していくビート・プログラミングによって耳にすんなりと入ってくるのはこの人ならではでしょう。お見事。

因みにジャケットにある漢字とロボットはLukeが日本をイメージしたとかしないとか・・・見開きのスリーヴ・デザインも何故か漢字だらけの日本地図ってな具合。惜しいけど微妙に違います。


Lauwarm Instrumentals

Scanner-Lauwarm Instrumentals
   ■Artist : Scanner
   ■Tltle : Lauwarm Instrumentals
   ■Label : Sulphur Records
   ■Release : 1999
   ■Sample :




90年代初頭より実験的なアプローチでSub Rosa/Raster Noton/Mort Aux Vaches(ex-Staalplaat)を始めとした多くのレーベルからアンビエント、ノイズ、テクノ、ドラムンベースなどのエレクトロニック・ミュージック作品をリリースしてきたイギリス出身のサウンド・アーティストRobin RimbaudによるScanner名義の1999年のアルバム『Lauwarm Instrumentals』。電話回線から盗聴した音をサンプリング・加工するというユニークな作曲法でも知られている彼だが本作品ではエクスペリメンタルな感触を残しつつもあくまでクラブ・ミュージックを通過したエレクトロ・サウンドを聴く事ができる。

冒頭『Immemory』はコラージュされた女性の囁き声が耳に纏わり付く中、生ドラムによる力強くダイナミックなハンマー・ビートが鳴り響き物憂げなピアノの旋律が絡む肉感的でいてスリリングな楽曲。とくに中盤の盛り上がりと共に激しさを増すドラムスは非常にカタルシスティックであり、静から動へ、そして再び静へと変化するドラマティックな展開となっている。#5『Lithia Water』ではおよそ12分にも及ぶ異色のドラムンベースを披露しているのだがこれも非常にスリリングで闇の中を疾走するようなダーク・コアに仕上がっている。

アルバム全体は沈み込むような暗さに満たされ鬱々としたサウンドとなっているのだがその中でも特にラストを締めくくる『Vertical Line』ではまるで冥界の淵から響いてくるようなダーク・ゴシック・アンビエントとなっている。
これがとてつもない程に生気が漂ってなくて退廃的でありながら美しい。つまりとてつもなく良い。


あひー

近頃、更新へのモティベーションが著しく低下してますが・・・はい、一応生きてます。

もう最近、暑過ぎ。ということで(?)外で踊るのが気持ちいい季節になりました。
最近はもっぱらこれが楽しみ。去年に引き続き今年も港で浜風に吹かれながらのDance & Chill。
メンツも豪華。プチシークレットで現在Japan Tour中のホニャララも来るとか来ないとか・・・

COMPUFUNK RECORDS 10TH ANNIVERSARY
OPEN AIR FREE PARTY OPENKNUF! 2006/8/12 SUNSET to SUNRISE @ 神戸第二突堤


Feed Me Weird Things

Squarepusher Feed Me Weird Things
   ■Artist : Squarepusher
   ■Title : Feed Me Weird Things
   ■Label : Rephlex
   ■Release : 1996
   ■Sample :
   myspace.com


今年の10月16日にWarpより前作以来およそ2年半振りとなるニューアルバム『Hello Everything』のリリースが控えているSquarepusher(a.k.a Thomas Jenkinson)の1stアルバム。
リリースはTom自身の長年の友人でもあり今や孤高のテクノ・アーティストとして一人シーンの遥か先(時に遥か後ろ、とか横とか縦とか斜めとかw)をひた走るAphex Twin主宰のRephlexより。

はちゃめちゃに手数の多い不規則なリズムに元々は熱心なジャズ・リスナーであり自身もベーシストであった彼の生弾きによるジャズ・ベースを組み合わせたサウンドを聴いた時は少なからず衝撃を受けた。それは彼自身の新たな試みであると同時にドラムンベースという音楽の可能性を大きく拡張するものであった。

本作品においてまずは何といっても冒頭を飾る#1『Squarepusher Theme』だろう。緻密且つ複雑に脈打つ扇情的なリズムが疾走する中、自身の弾くベースが華麗にそしてハードに響き渡る見事な、正にSquarepusherのテーマとするに相応しい曲となっている。ここで聴けるイレギュラーなリズムは後に確立される“ドリルンベース”前夜といった所だろうか。
この1stアルバムでは2ndで聴く事の出来る奇天烈で奔放な印象は幾分薄めた割とシリアスな楽曲が多く揃っている。それでもジャズからドラムンベース、ダブ、アンビエント、アシッド、トライバルなどの要素を取り入れ触れ幅の広さと自由度の高さを披露してくれる。
特にアルバム中後半に於いては畳み掛けるように素晴らしい楽曲が揃っている。#7ではハードでインダストリアル、脳を突き刺すようなノイジーなビートが曲中を駆け抜け、続く#8では柔らかいメロディーが優美に舞うノンビートのアンビエントで一時の休息を与える。#9ではミステリアスで幻想的なメロディーと共に超絶悶絶モノのドラム・プログラミングが炸裂し最後にはビキビキ・アシッドでグチャグチャにかき乱すというアルバム中のハイライトであり至高の展開を迎える。いやぁアンタまじ最高だよ!!!

・・・えー ゴ、ゴホッゴホンッ・・・とにかく今聴いても十分に刺激的で自由な感性のほとばしる作品であるのは間違いないだろう。近年の彼はかなり実験的でアヴァンギャルドな作風のようなので、個人的に新作には是非初期のようなサウンドを期待したい。


Quiet Knowledge

NoMa-Quiet Knowledge
   ■Artist : NoMa
   ■Title : Quiet Knowledge
   ■Label : Clue-L
   ■Release : 2002
   ■Sample : −




NoMa−作詞、作曲、ヴォーカルは勿論のことギター、サックスなどを自ら手掛けるアーティスト、Yasumi Makinoによるソロ・プロジェクト。彼のデビューEP『Quiet Knowledge』は共同プロデューサーとしてPort of Notesの小島“DSK”大介を迎え、古くから独自の距離感でクラブ・ミュージックを通過した良質なポップスや歌物と接し、近年ではオルタナティブなハウス・ミュージックの発信とレーベル設立15周年を迎えた日本を代表するインディペンデント・レーベルClue-Lよりリリース。

ジャズやボサノバ、フォークを基調としたアコースティックな演奏に彼の瑞々しく官能的な歌声が重なり幻想的で儚い世界を描き出している。そして夏という季節の持つ熱気の裏に隠されたセンチメンタリズムがぐっと凝縮された切なさの感じられる非常に感傷的な作品となっている。

肌をなぞるように優しく奏でられるアコースティック・ギターの調べと抑制の効いたドラムス、辺りの風景が滲み出すようなサックスの音色に彼の少し鼻に掛かったような歌声と繊細なファルセット・ヴォイスが交錯し詩情に溢れた世界を作り出している。
#4『Y & I』では自身もフェイバリットに挙げているJoão Gilbertoを思わせるような緩やかで甘美なボサノバ・ナンバーが郷愁を誘い、ラストを飾る#5『g.m.l.h』ではまるで過ぎ行く夏に思いを馳せるかのようなギターによる激情のフィードバック・ノイズと女性の囁き声にも似た彼の美し過ぎるファルセット・ヴォイスが幻想と切なさの狭間で揺らめくように展開する至上の楽曲となっている。

夏の夕暮れ時、琥珀色に霞んだ空に大きく伸びた自分の影、・・・それらが思わず脳裏をよぎってしまうのは余りにも出来すぎた光景だろうか。


Permutation

Amon Tobin-Permutation
   ■Artist : Amon Tobin
   ■Title : Permutation
   ■Label : Ninja Tune
   ■Release : 1998
   ■Sample :
   myspace.com


ブラジルはリオ・デ・ジャネイロ出身、Ninja Tuneを代表する孤高のビート・メイカーでありCujo名義でも活動するAmon Tobin。彼による2ndアルバム『Permutation』はジャズやファンク、ブルースからヒップ・ホップといった自身の音楽的背景をドラムン・ベースというフォーマットに巧みに落とし込み、更にはそこへ鬱々として非常に重々しく煙たいトリップ・ホップサウンドを掛け合わせたハイブリッドなブレイク・ビーツ作品となっている。

先ずこのアルバムの場合、何といっても自身のサンプリング・コレクションや所有のレコードから抽出し構成された複雑でイレギュラーに跳ねまくる強烈なビートラインが特徴的で、それらは非常に生々しく且つ迫り来るような臨場感とスケール感を伴ったサウンドを生み出しているのである。
それと共にスウィンギーで流れるように滑らかなベースラインによって何ともオーガニックで官能的なジャズ・ブレイクスに仕上げてきている。
生ドラムからのサンプルを使用した高速に乱打するパーカッシブなポリリズミック・ビートは過剰でいて鮮烈、鬼気迫る展開はまるで狂気を孕んでいるようにさえ感じられる。一方でアルバムのラストでは彼のルーツでもあるブラジルからの影響を感じさせるボッサ風のスローなリズムを意識したようなダウンテンポも披露している。

アルバム1枚を通し終始気だるく不穏な空気が流れているのだが中盤辺りからは重々しいビートは徐々に軽快さを増しながら生楽器によるサンプリングを多用しアップリフティングな曲調のものからダウンテンポの曲を織り交ぜジャズ、ダブ、アンビエント、ドラムン・ベースと幅広いレンジの曲を聴かせてくれるのだが彼の一貫した世界観によってアルバムは奇妙な統一感をもって纏められている。


USSR Repertoire

Dj Vadim-USSR Repertoire
   ■Artist : Dj Vadim
   ■Title : USSR Repertoire
   ■Label : Ninja Tune
   ■Release : 1996
   ■Sample :
   myspace.com


Dj Krush、Shadow、Cam等と共にアブストラクト・ヒップホップの代表的なアーティストとして90年代より活動を続け今やシーンに於いて確固たる地位を築いたDj VadimによるNinja Tuneよりリリースされた記念すべき1stアルバム。これはロシア出身というヒップホップ・カルチャーにおいて地理的なマイノリティーにある彼があくまで自身のルーツであるヒップ・ホップとサンプリング・ミュージックに拘って作り上げた作品である。

彼のサウンドは正にヒップ・ホップに於ける「引き算の美学」ともいうべき極力ギミックを廃し音数を絞り上げ間合いを深く取ったミニマルなビート・メイクを得意しているのだが、けっしてシリアスになり過ぎずユーモアや遊び心も忘れずに様々な国の言葉やラジオの会話をサンプリングしそれらを切り貼りする事でビートの隙間を巧みに埋めていく。
そしてメランコリックで煙たいジャズ・サンプルを使いしっとりとムーディーにも聴かせビートの隙間からは独特のアンビエンスを感じる事ができる。抜けのいい渇いたビートとしなやかなベースが響き渡りそこへ女性のコーラスや美しいピアノの旋律、ポエトリー・リーディングなどが絡み肩の力が程よく抜けスロウなグルーヴが全体を支配する非常にリラクシンな作品になっていると言えるだろう。

因みにタイトルの頭にある『USSR』とは旧ソヴィエト連邦の英略である。
彼の作品のタイトルの多くにはこの『USSR』が付いている。
幼少の頃イギリスに移住し人生の大半をロンドンで過ごし、今や国籍もブリティッシュの彼が『USSR』に拘るのは彼の中に宿るアイデンティティの強さへの現れだろうか・・・・
ただ言える事はかつて閉ざされた国からやってきた一人の少年の音楽への、とりわけヒップホップに対する深くそして今だ新鮮な愛がこのアルバムには詰まっているという事だけだ。

『音楽は人のために−ただ聴くだけ、そしてリラックス』