Demo(n) Tracks
... 2006.05.28.[Sun]

■Artist : Vladislav Delay
■Title : Demo(n) Tracks
■Label :Huume
■Release : 2004
■Sample : ♪
Sasu Ripatti・・・・フィンランド出身のこのアーティストはLuomo名義に於いては艶やかで耽美的なミニマル・ハウスを、そしてこのVladislav Delay名義では徹底的に体感温度の低い孤独なサウンドでBasic Channelフォロワーとも言える実験色の強いミニマル/ダブ作品をリリースしている。
2004年にリリースされた本作「Demo(n) Tracks」はリリースを自身の主宰するレーベルHuumeから、そしてかつてのVladislav Delay名義の作品に比べてもより深部に突き進んだサウンドを披露している。
ベルリン滞在中に制作されたという本作はジャケットが描き出したような極めて陰湿でモノクロな質感の作品であり曇天の空を思わせる不透明でまるで灰色の虚空へと全てを吸い込むような異形のサウンドスケープを展開している。
アルバムを通して一貫した世界観を表現し、かつてない程にアグレッシブ且つ混沌としたダビーなアプローチによって音はより捻じ曲がり空間的な広がりを見せ更には並々ならぬ音響面での拘りが感じられる作品となっている。
リズム同士が互いに衝突を繰り返すようなノイジーで破壊的なサウンドを生み出してはいるがその反面、非常に細やかで偏狂的ともいえる音響処理によってまるで音の粒子一つ一つが浮き上がってくるようでもある。
それと共に時折ノイズを切り裂くように現れる光の放射を思わせるメロディーがこの世のものとは思えないほどに鮮やかで美しく天上的な空気に満たされカタルシスティックな感覚が湧き上がる。
もはや達観の域にまで辿り着いてしまったこのサウンドは鮮烈でいて衝撃、まさに圧倒的という言葉こそが相応しいだろう。
Kompilation
... 2006.05.27.[Sat]

■Artist : V.A
■Title : Kompilation
■Label : Kranky
■Release : 2004
■Sample : ♪
ポスト・ロックからアンビエント、果てはエクスペリメンタルな音響作品まで振れ幅の広いサウンドでシカゴのインディー・シーンをリードするレーベルKrankyによる廉価コンピレーション・アルバム。
収録曲は殆んどが既発曲ながら2枚組、21曲およそ150分収録という圧倒的なヴォリュームを誇るまさにKranky入門編としてもうってつけの作品集だといえるだろう。
しかも今ならamazonでビツクリの¥893。
内容の方も申し分なくアンビエント〜ドローン、アコースティック、フィールド・レコまで伝統的な手法の中でKrankyが歩んできた実験精神を体現するかのようなヴァラエティに富んだ内容となっている。
(参加アーティストはTrack List参照)
特にドローン系の楽曲ではこのレーベルらしい少し捻れたアシッド感覚がドローンという非常に長大な流れを持つ音の中で徐々に変化を遂げサイケデリックな浮遊感覚へと辿り着く様は圧巻である。
中でも初見のアーティストではあるがKeith Fullerton Whitmanによる“Stereo Music for〜”は金属的な持続音が幾重にも折り重なって奏でられ壮厳で重々しい空気の中を鬼気迫るようなスリリングな展開と緊張感がほとばしるエッジの効いたインダストリアル・ドローンを披露している。
他にもお馴染みのPan Americanは深海系のアンビエントで深く瞑想的な世界を作り上げStars Of The Lidは相変わらず壮大でストーリー性を感じられる組曲的作品を提供している。
全18アーティストが21もの楽曲を提供しそれぞれの作品によって様々なカラーがあるのだがアルバム単位として不思議と整合性の取れた印象で違和感なく聴くことが出来る。
多くの曲にクラシカルながら何処かしら冷めたアシッディな感覚が流れているのもそう感じる所以だろう。
レーベル設立の1993年以来、Krankyが培ってきた歴史の片鱗(レーベルカタログの中から僅か21曲というほんの片鱗だが)をこの2枚で体感できるだろう。
ぼくたちみんなだね
... 2006.05.27.[Sat]

■Artist : Tenniscoats
■Title : ぼくたちみんなだね
■Label : Majikick Records
■Release : 2004
■Sample : ♪
テニスコーツはヴォーカルのさやとギター、サックスなどの演奏を務める植野隆司を中心とした流動的なユニット。『テニスコーツのテーマ』、『エンディングテーマ』 と2枚のミニアルバムを経て2004年にリリースされた1stフルアルバム『ぼくたちみんなだね』を自身のMajikick Recordsからリリース。
さやの溢れるような水々しさと純真な幼児性を湛えたヴォーカルはまさに唯一無比なものであり芳醇でありながらも無垢な詩情を伴って穏やかに音の波を漂う。
彼女の声からはそれが辺りに響き渡った瞬間、まるで取り囲む全ての景色が緩やかに変化していくような不可思議で圧倒的な存在感が感じられる。それと共に時にセンチメンタルに切なく、そして時に軽快に飄々と曲ごとに様々な表情を見せながらもしなやかに歌い上げているのである。
演奏面でもエレクトロニクスと生楽器をうまく取り込み、より音響的に拘りが感じられ牧歌的で穏やかな空気と共に胸を締め付けるようなノスタルジックな響きをピアノ、ギター、サックスなどによる演奏にうまく落とし込んでいる。中でもギターによるリフレインからは赤茶色くくすんだような哀愁溢れるサイケデリアが感じられコンパクトな演奏の中で一際強い個性を放っている。
近年ではDJ Klockとのユニット、Cacoyや工藤冬里率いるMaher shalal hash bazへの参加など共演、客演、そしてライブなども含めて充実した活動を行なっていた彼らの集大成とも言える作品に仕上がっているだろう。
Block Terrain
... 2006.05.21.[Sun]

■Artist : tenEcke
■Title : Block Terrain
■Label : K2 O Records
■Release : 2002
■Sample : ♪

かつてSub RosaやQuatermassからもアルバム・リリースの経験があるインディーロック・バンド、Callaのメンバーとしても活動しているWayne B. Magruderによるソロ・プロジェクト=tenEcke。
彼のtenEcke名義でのファーストアルバムはHeiko Laux率いるドイツのテクノ・レーベルKanzleramtのサブ・レーベルであるK2 O Recordsからのリリースとなる。親元のKanzleramtに対しこのK2 Oではエクスペリメンタル/アンビエント/ブレイク・ビーツ寄りの作品を多くリリースしている模様。
本作もいかにもドイチェ、といった感じの硬質でザラついた質感のビート・メイクが特徴的で全体的に非常に陰鬱でアブストラクトなサウンドはまるで灰色に曇った空が全てを覆い尽くすような、そんな重々しい印象すら感じられる。しかしながらそれだけではなくエレキ・ギターを始めとした楽器による繊細なメロディーと流れるようにたおやかな上モノが絡む事によってモノクロームに覆われた世界に僅かながらメランコリーな光りが照らし出されている。
自身の所属するバンドではドラムを担当するだけあってリズムはかなり緻密で曲ごとに多彩で重層的なビート・プログラミングが小気味良く脈打ち緊張感溢れる音像を生み出している。
中でも#4は複雑に絡み合うイレギュラーなバウンス・ビートに後半に現れるストリングスの鬼気迫る旋律が非常にスリリングで圧巻の一言である。
Callaというロックバンドを組んでいる事も影響しているのかロック的なダイナミズムと展開も感じられるブレイク・ビーツ作品に仕上がっている。
GreenHous #3
... 2006.05.20.[Sat]

■Artist : AK-47
■Title : GreenHous #3(MIX CD)
■Label : Black Smoker Records
■Release : 2005
■Sample : −
立ち込める黒い煙の奥底から、とことん怠惰でユルい音楽を撒き散らす異能の黒煙ヒップホップ集団、Think Tank。本作はThink TankのメンバーでもあるDJ YajiとWadakeによるユニット、AK-47がこれまでに手掛けてきたMIX TAPEシリーズ「GreenHouse」の最新作でありフォーマットも初のCDとしてリリースされたものである。(因みにユニット名でもある“AK-47”とはアレの有名な銘柄ですな)
勿論彼らのことだからテーマは“Stoned”にきまってる(でしょ?)。
全編に渡りヒップホップにダブ、ブレイク・ビーツ、ダウンテンポにエレクトロニカ、トライバル、ジャズまで彼らにとっての黒く煙たいDope Shitが緩いテンションで繋げられている。といってもミックス自体に重きを置くというよりも自身の選んだ楽曲をコンパイルしているといった印象が強い。
特別に盛り上がりを意識するような構成ではないのか終始まったり、ほっこりと室内酩酊楽の様相を呈しジャジーで官能的な仕上がりになっているのだが時にナンセンスで奇抜な効果音が飛び交い、巧みなスクラッチのカットがトラックの間を縫うように挿入されギミックやユーモアにも事欠かない内容となっている。
中でも後半に於いては特にとろけるように甘くメランコリックな楽曲が多く骨抜き状態にさせられる。
Think Tankのオリジナル・アルバムで見せたような強烈な自堕落感は幾分さらっとした空気に換えられてはいるが、やはりこれは怠けるのが大好きな悪い大人の為の室内酩酊楽集である。
怠け者の美学、ここにしかと在り。
Tally Ho!
... 2006.05.14.[Sun]

■Artist : Wagon Christ
■Title : Tally Ho!
■Label : Astralwerks
■Release : 1998
■Sample : ♪

今月の26日から3日間に渡って東京、大阪、名古屋の3都市で行なわれるUKの老舗レーベルWarpのショウケース的イベント『i Warp』。それに伴ってWarp所属のLFO、Plaid、Jackson、Jimmy Edgarら新旧入り混じったアーティストと共に来日する事が決まっているLuke Vibert。
今回はそんな彼のWagon Christ名義での1998年のアルバム「Tally Ho!」。
本人名義に始まりAmen AndrewsやPlug、そして本作でのWagon Christなど作品によって様々な名義を使い分けるアーティストLuke VibertがこのWagon Christ名義では奇妙なサンプリングやコラージュを駆使したブレイク・ビーツサウンドを披露している。
本作はとにかく「音」を楽しんでいる作品で、アブストラクトなものからアシッド、ドラムンベース、ジャズにラウンジ、コラージュにボイス・サンプルと非常に彩り豊かなユーモアに満ち溢れたサウンドで堅苦しい空気など一切なく肩の力が程よく抜け、突き抜けるような楽天性を押し出した粒揃いの楽曲が詰め込まれている。
非常にユーモラスで時にキッチュなサウンドなのだが細部にまで行き届いた音作りはまさに職人技で流石の一言。ドラムの入り具合もことごとく格好良く気持ちがいいし上モノのかぶせ方もサラりとしていてすっきりと灰汁がない。
特にこの名義ならではのサンプリング・マジックが映えるヒップホップ〜ブレイクビーツから畳み掛けるようなドラミングが華麗に疾走する“元祖”ドリルンベース辺りは聴き応えあり。
純粋に「音を楽しむ」という事がアルバム全体から感じられる作品であり、きっと何よりもこのアルバムをLuke自身が楽しみながら作ったと思うよ。
Feast
... 2006.05.13.[Sat]

■Artist : V.A.
■Title : Feast
■Label : Tri-Eight Recordings
■Release : 2006
■Sample : ♪
日本発、バレアリック・トリップへの直行便。
地下音楽を発信する日本発のレーベル、Tri-Eight Recordingsの初コンピレーションアルバム。
参加アーティストも DJ Kensei、Upsets feat Zero、Slow Didi、GoRo、Kentaro Iwaki(ex.Dub Archanoid Trim)、Jebski and Yogurt、Expe(ex.Nutron)とアンダーグラウンド・シーンで活動する豪華アーティストが結集。それに加えてフィールド・レコーディングとして京都は紫竹の秘境レコード・ショップMeditationsが参加。
まずトライバルに脈打つ土着的なリズムと飛び交う覚醒的な電子音が眩しくギラついた#1、Upsets feat.Zero「Ethno(DJ Kensei Re-Edit)」でこれから始まる深い密林への扉が開かれる。
続く#2ではSlow Didiが強烈な雷鳴の音と共に地表すれすれの淡々としたベースがミニマルに打ちつけ空間的なシンセが彼方へ拡がっていく超低空トラックを披露、#4では先述した通りMeditationsがインドはタッテッカドゥ鳥類保護区で現地録音してきたという視界も脳みそも一気に開けたような極上のナチュラル・ヒーリング・トリップを味わわせてくれる。
後半は更に密林を分け入るようによりディープな深部へと導かれ快楽的で天上的なアンビエントにα波もドーパミンも垂れ流し状態、つまり非常にヤバく良い。
特に#6では凄まじいまでに寄せては返すギャラクティック・シンセの波が脳みその中で拡散するように一気に広がり・・・・・・そりゃもう脳みそ、ぱっか〜〜んって感じ。
時には強烈なグルーヴ、そして時には強烈なトビを放ちながら太古からのリズムをコズミックな電子音で紡いでいく。急上昇、急降下、急旋回は当たり前、ダンス、チル、メディテート、とにかく何でも御座れって感じのトビにトんだ真のトランス・ミュージック。
More or Enough
... 2006.05.13.[Sat]

■Artist : Taichi
■Title : More or Enough
■Label : Revirth
■Release : 2006
■Sample : ♪
前作「Weekend Control(→過去記事)」からおよそ3年、GroupやStimではドラムスティックを握りまたソロに於いてはエレクトロニクスを操る次世代を担うブレイク・ビーツアーティストでもあるTaichiの3rdアルバムが3年振りにようやくリリースされた。リリース元はもちろんRevirthから。
今作ではゲストもGOMA(Dederidoo奏者)、U-zhaan(exASA-CHANG&巡礼)、MASTERPATA(ex.Dry&Heavy)、Ige(ex.Group)と多くを迎えより多彩でカラフルなものに仕上がっている。
冒頭から彼の、彼らしいサウンドに思わず頬が緩む。
アナログ感漂うロウ・ビットのチープで愛くるしい長閑なメロディー、リズムは軽快なステップを踏むようにグルーヴィーに跳ねまくる。伸びやかなアープ(?)の拡がるような音色はドリーミーで思わずうっとりさせられる。
続く#2では折り重なる電子音によるハーモニックな揺らぎと躍動的なビートが美しく絡み合う。
GOMAをゲストに迎えた#3は個人的にはもう少しはちゃめちゃに遊んで欲しかったかな?
この手法に関しては偉大な先達がいるからね・・・・
それに比べるとタブラをフィーチャーした#4はエキゾチックで乾いた音色のタブラに電子音によるアンビエンティッシュで情感溢れるメロディーがうまく混ざり合いドラマティックな展開へと導かれる。
そして#6では自身の所属するGroupでの盟友でもあるIgeを迎えアルバム中最もセンチメンタルな楽曲へと仕上げている。Igeの優しく奏でられるエレキ・ギターの切ない音色と細やかな処理を施した電子音の繊細な響き、そして徐々に盛り上がりを見せるグルーヴィーで跳ねたリズムが渾然一体となってラストへと疾走するさまはアルバム中のハイライトともいえる。
前作でのピュアで弾けんばかりのサウンドはそのままに今作ではよりグルーヴ感を意識した明朗で澄み切ったTaichi色を存分に発揮した作品ではないだろうか。
Bathing in Sunshowers
... 2006.05.08.[Mon]

■Artist : K.F.re-presents CALM
■Title : Bathing in Sunshowers
■Label : Music Conception
■Release : 2005
■Sample : ♪
ジャズをエッセンスに極めて都会的で洗練された音楽性と雑食性溢れたスタイルでダンス/ラウンジ双方向へと向けた作品を生み出すアーティスト、深川清隆。
Calm名義でもお馴染みの彼だが今回はK.F.re-presents CALMということで、よりフロア志向の強いK.F.名義での作品をCalmによってセルフ・リメイクするという形をとっている。
何と言ってもこの作品で特筆すべきはアルバム冒頭を飾る「Deep In The Forest」と続く「Deeper In The Forest」だろう。この2曲で1つを為す楽曲はかのManuel Göttsching御大の名作「E2-E4」へのCalm流のオマージュとも言える約20分にも及ぶ大作となっている。
清廉で清々しい虫の音で幕を開けるこの楽曲は「E2-E4」のようなミニマリズムが生み出したトランシーで快楽的な要素も盛り込みつつビートアレンジを効かした軽快で瑞々しいダンストラックに仕上げている。
浮遊感に富んだシンセのミニマルなフレーズから導きだされたオプティミズムと空間的な広がりを見せる音響処理、特に後半に展開されるエレクトリック・ギターのとろけるような音色はかつて「E2-E4」でGöttschingがみせたサイケデリックなそれを彷彿とさせる。それと共に中盤辺りからうねるように駆け上がっていくシンセのメロディーは非常にトリッピーでそれまでのCalm諸作品とは少し違った印象を受けるだろう。
それ以外にも力強いキックにピアノの流れるような旋律が非常に美しく情感的な「Komorebi (Sunbeams) 」、繊細なアコースティック・ギターによる調べをバックにソウルフルで力強い歌声が多幸感を誘うゴスペル・ハウス「(Bathing in) Sunshowers」と聴き所も非常に充実している。
ダンサブルな4つ打ちを基調としながらCalm名義での幻想的でオーガニックな作風を施し彼らしいアーバンで何とも気品溢れる作品に仕上げている。








