Sakura
... 2006.03.26.[Sun]
■Artist : Susumu Yokota
■Title : Sakura
■Label : Leaf
■Release : 2000
■Sample : ♪

Susumu Yokotaによる素晴らしいサクラ・アンビエント。
自身のアルバムだけに関しても優に30作を越える作品を発表している非常に他作なアーティストであり作品ごとに様々なジャンルの垣根をまたぐマエストロ、横田進による2000年イギリスはLeafからリリースされた横田流の美意識と情緒に溢れた和製アンビエント作品「Sakura」。
この「Sakura」は彼特有の流麗さと気品さを持ち合わせた素晴らしい作品である。
清涼感溢れるピュアなメロディーと深く刻まれる確かなリズム。
暖かいエレピのたゆたうメロディーに上品なストリングスが紡ぐ気高い旋律。
リフレインを繰り返す女性の美しいコーラスはまるで長い冬の眠りから目覚めゆっくりと蕾から解き放たれた花々のように静かな喜びに満ちている。
特にアルバムの冒頭を飾る「Saku」はまさに桜の芽が蕾となりやがては花開く様子をまるでスローモーションで捉えたかのような非常に穏やかでありながらも確かな表情の変化を感じさせる楽曲になっている。
そしてノンビートの美麗なアンビエントだけでなく#10のような生楽器をふんだんに使用しまるで桜の花々が嬉々として鼓舞しているようなスウィンギーな横田流のジャズも非常にエレガントに仕上がってる。
しかしここで彼の描きたかった「Sakura」は満開に咲き誇り多くの人々を魅了するような煌びやかな桜並木ではない。
きっと昔から何も変わらずそこに凛として佇む、道行く人の足をふと止めてしまうようなそんな「桜」なのだ。
Mercy Street
... 2006.03.26.[Sun]

■Artist : A Reminiscent Drive
■Title : Mercy Street
■Label : F-Communications
■Release : 1997
■Sample : ♪
まずジャケットの非常に美しいアートワークに思わず息を呑んでしまう。
これはフランスの老舗テクノ/ハウスレーベルF-Communicationsから1997年にリリースされたJay Alanskyのソロ・ユニットA Reminiscent Driveによる儚き美しさに彩られた素晴らしいアンビエント作品「Mercy Street」である。
桜の花が限られた短い時間の中で咲き誇りまた華麗に散っていくようにこのアルバムもそんな桜の美しくも儚い刹那的な瞬間の表情を閉じ込めた作品となっているのではなかろうか。
中でも彼の代表曲でもありアルバムの冒頭を飾る「Life is Beautiful」の美しさは筆舌に尽くしがたい。暖かく流麗なメロディーラインと浮遊感に富んだシンセ、深く打ちつけるディレイには感情の高鳴りを感じずにはいられない。
そこにはまるで慈しみに溢れた光で聴くものを優しく包み込んでくれるような錯覚まで覚えてしまう幸せに満ちた瞬間が在る。
そしてアルバムの中盤〜終盤にかけて訪れる展開はアルバム中のハイライトとも言えよう。
ここではまるで優雅に咲き誇る桜の花びらが散り行く様を細かに捉えたかのようなドラマティックでいて悲哀と切なさに満ちたストーリーが感じられる。
やがてアルバムのラストに近づくにつれ穏やかな表情でありながらも新たな生命の息吹の到来を感じさせる展開に移り行き最後には再び「Life is Beautiful」の印象的なフレーズで締めくくられる。
「アンビエント」とは言いながらも生音も随所に散りばめられボッサ調のアコギから扇情的にかき鳴らされるエレキギター、物哀しいピアノの旋律、肉感的で力強いドラムスなど非常にオーガニック/ラウンジーでまたエモーショナルな素晴らしい傑作といえよう。
Hi Scores
... 2006.03.25.[Sat]

■Artist : Boards of Canada
■Title : Hi Scores
■Label : Skam
■Release : 1996
■Sample : ♪

昨年2005年におよそ三年ぶりとなる3rdアルバム「The Campfire Headphase」(ブログ内記事)をリリースし大胆な生音の導入で彼らなりのエレクトロニクスとの折衷を披露したBoards of Canada。
そんな彼らが先日、3rdアルバムに続き早くも6月には新曲も含むEP「Trans Canada Highway」をリリースするというニュースをオフィシャルで発表した。
本日取り上げる作品は1996年リリースの彼らの初期EP「Hi Scores」である。
同じく初期の「Twoism」(ブログ内記事)の後にリリースされる事となった本作は表題曲でもある「Hi Scores」を含む6曲収録(#2は「Music Has The〜」、#5は「Twoism」にも収録されている)からなるEPで何度かリ・プレスされているので初期作品ながら現在でも比較的入手はしやすい。
およそ10年前の作品だが最初期EP「Twoism」と共にBOCの中に現在にまで脈々と繋がる普遍的なスタイルと結成当初からの曇りなきヴィジョンがサウンドとなって表れている。
曲中に漂う不穏な空気、神秘のベールが全体を覆うようなサウンド・スケープ、アナログ・シンセによる暖かくノスタルジックなメロディーと、どこをとってもBOCには必要不可欠な要素。
ただ3rdアルバムと聴き比べるとこちらのEPは断然に灰汁が強く且つドロっとした湿り気のあるサイケデリアが全体に渡って展開されている。
リズムに関してもボトムはかなり太く、特に#3などは彼らにしては珍しく歪んだシンセのメロディーにチープで乾いた音、ヴォコーダーヴォイスが特徴のBOC流のエレクトロになっている。これは彼らの中でも結構異色かも。#4も珍しくアップリフティングなビートが特徴のブレイク・ビーツ。
それでも一聴してBoards of Canadaのサウンドだとわかるのは彼らが時勢に囚われず自らのスタイルを10数年も貫いてきたから。
まぁ変わり映えしない、っていうのはお互い言いっこ無しで。
Now I'm Rendered Useless
... 2006.03.19.[Sun]

■Artist : Twerk
■Title : Now I'm Rendered Useless
■Label : Force inc.
■Release : 2001
■Sample : ♪

ストレンジでいびつ、且つ非常に内に篭った感のあった奇形音響クリック作品をリリースした3rdアルバム「Living Vicariously Through Burnt Bread」(過去記事)から遡る事2年、Twerk名義のShawn Hatfieldによる2001年リリースの2ndアルバム「Now I'm Rendered Useless」。
レーベルもサブ・レーベルであるMille Plateauxではなく親元のForce incからという事で3rdアルバムに比べてよりはっきりとした4つ打ちのフロア志向の強い作品となっている。
3rdアルバムは全体的にかなりアブストラクトな印象でドイツ・パルス系の諸作とも共振するような音響作品(それでも十分にTwerk色)だったが本作は所謂真っ当?なクリック・テクノ作品に当たるだろう。それでもやはり個々の音使いからは奇形/変態的な片鱗が垣間見える。
コラージュ・サンプルや金属的な微細ノイズを随所に用いながらも耳当たりは非常に良く骨格的で硬質なビートにぐんぐんと引っ張られる展開となっている。リズム主導のコロコロとした球体系トイ・サウンドやロー・ビットのチープな音使いには思わず口元が緩んでしまう。
音数を絞り上げる事にはそれほど意識的ではないように感じられるが上モノを中心とした細やかな音やギミックに溢れた音使いはやはり確信犯的である。
中でも音の粒子、特に細やかなリズムを刻むグリッチ・ノイズが四方八方に分裂・飛散・収束を繰り返すように展開しながら、やがてはかっちりとしたグルーヴにはめ込んでる様は非常にファンキーでありスリリング。
うーん、やっぱこの人好きだわ・・・
PS I Love You
... 2006.03.18.[Sat]

■Artist : Kid 606
■Title : PS I Love You
■Label : Mille Plateaux
■Release : 2000
■Sample : ♪

自ら主宰するTigerBeat 6を拠点にテクノ、エレクトロニカ、ノイズ、ブレイク・ビーツ、果てはラガ・ジャングルまでユーモアとジャンク感をごちゃ混ぜにして破綻しまくったブレイク・コア・サウンドを生み出すアメリカは西海岸のラップ・トップ・アーティストKid 606ことMiguel Depedro。
本作はリリースがMille Plateauxということもあり当時このレーベルが積極的に推し進めていた典型的な「Clicks_+_Cuts」路線のサウンドであり、いつものKid606の作風に比べると幾分シリアスな音響テクノ作品となっている。
極めてアンビエンティッシュな美麗レイヤーにクリスピーで跳ねるようなリズム、無造作に奏でられるアコースティック・ギターのとりとめもないメロディー、そして双方向から繰り出される凝った音響処理により、やがては立体的な空間が目の前に広がるだろう。
小気味よく跳ねるビートが何ともグルーヴィな#4や、#5のようにひたすら安らかな揺らぎを持った美しいアンビエント、ラストを飾る#9のようなノイジーなトラックなどが収録されている。
ジャケットのアートワークに描かれた浮遊する多面体の如くフワフワとした空間処理にマイクロスコピック・ファンクとも言えるような電子音によって極度にシェイプ・アップされたミニマリスティックなファンクネスがアルバム全体から感じ取れるような内容となっている。
冒頭で「シリアス」とは書いたがあくまでそれまでのkid 606の作風に比べると、ということでありこのアルバムは十分にポップな色を放っているだろう。
それに何といってもタイトルが素敵じゃないか。だって「PS I Love You」だよ?
電子音による愛の告白・・・・なんてシュールでロマンティックな作品なんだろう。
Ruby Series
... 2006.03.17.[Fri]

■Artist : Rebecca Gates
■Title : Ruby Series
■Label : Badman Recordings
■Release : 2001
■Sample : ♪
過去にSub Pop Recordsからもアルバムのリリースがあったデュオ、The Spinanesの歌姫Rebecca Gatesによるソロアルバム。
プロデュースはシカゴポスト・ロック勢の雄、Tortoise/The Sea and CakeのJohn McEntireが担当。とにかく彼のプロデュース・ワークが冴え渡っていると言って良いRebecca Gatesのボーカルだけでなくサウンド面においても素晴らしい作品である。
Rebeccaによる淡々としながらも一つ一つの感情を丁寧にすくい取っていくような憂い帯びたボーカルと慎ましい演奏が非常に印象的である。
電子音による響きは極力抑えた実にアコースティックなサウンドで様々な楽器が使用されているにも関わらず核にあるのは静寂を携えた演奏であると言えよう。
抑制の効いたエレキ・ギターが残響音と共に幾重にも重なり瞑想的な響きへと変化する。
アコースティック・ギターによって爪弾かれる郷愁感に満ちた緩やかな旋律を耳にすると記憶の中の在りし日への思いが連なるように湧き出てくる。
そしてこの甘美な音色を奏でているのはローズだろうか。非常にメロウで人肌の温もりが感じられる音色が胸を掻き毟るように切ない。
彼女のボーカルは一聴するとクールネスで乾いた印象のものかも知れない。
しかしまるで聴く者を諭すかのようにゆっくりと実に穏やかに言葉を紡いでいく様は全てを受け入れてくれるような懐の深さと包容力に満ち溢れている。
そしてやがては彼女の歌声が新たな季節の到来を告げる優しい春の風のように耳を通して体全体に吹き渡る事だろう。
In A Safe Place
... 2006.03.13.[Mon]

■Artist : The Album Leaf
■Title : In A Safe Place
■Label : Sub Pop Records
■Release : 2004
■Sample : ♪

Tristezaのメンバーとしても知られていたアメリカはサン・ディエゴを拠点として活動するマルチ・インストゥルメンタリストJimmy LaValleによるソロ・プロジェクトThe Album Leaf 。
今作ではSigur Rós、Múm、Amina、Black Heart Processionという錚々たるメンバーがゲストとして参加し尚且つレコーディングもアイスランドで行なわれるという事で、かの地が育んだ音楽性を存分に吸収したThe Album Leafにとって新境地とも言えるサウンドに仕上がった。
本作では多くの生楽器が使用されているが中でもやはりチェロ、ヴァイオリンを始めとした弦楽器による響きが非常に印象的である。
ストリングスの持つ音色は悠久の時を一つ一つ丁寧に紡いでいくかのように穏やかに奏でられる。
ドラムスによる軽快なリズムとハイハットの乾いた音色、エレクトロニクスはそれまでに比べやや控え目ではあるが効果的に細やかで繊細なリズムを刻んでいく。
jónsiの歌声が素晴らしいのは言うまでもないだろう。
そしてこのアルバムではJimmy LaValle自らがその歌声も披露している。自身で綴りあげたその歌は朴訥とした歌声と穏やかに語りかけるような口調が聴く者の心に静かに響き安堵をもたらす。
Sigur Rósらが参加する事で生まれたであろう北欧の音楽の持つ緩やかなヴァイブレーションがJimmy LaValleの息遣いと共振しているかのようだ。
そして何よりもこの作品には幸福な空気が満ち溢れている。ここには気負いもなければ後ろ向きな感情もない。世間の性急なリズムとは相反するリズムがこのアルバムの中では流れているのだ。
決して目が眩む程の煌びやかな光を放っている訳ではないが深い紺碧の光が瞼に焼き付いて離れないだろう。
AnimaminA
... 2006.03.13.[Mon]

■Artist : Amina
■Title : AnimaminA
■Label : The Workers Institute
■Release : 2005
■Sample : ♪
Sigur Rósのアルバム「( )」「Takk...」に参加し今回彼らのJapan Tourにも同行し来日を果たすAmina。
Aminaは女性4人組によるストリングスを中心としたインスト・カルテットであり同郷のSigur Rósのサウンドに於いても中核を担うであろう弦楽器による美しく壮厳な響きを持った演奏が非常に印象的でもあった。
今作「AnimaminA」はそんな彼女達の4曲入り18分のデビューEPである。
ヴァイオリンやチェロを始めとするストリングス系統を中心に鉄琴やピアノ、パーカッションといった様々な楽器をエレクトロニクスに美しく溶け込ませている。リズムの1つにガムランのような湿気を含んだ水々しい響きを持った楽器を用いているのが何とも印象的だ。
オルゴールの音色にも似た鉄琴の持つ優しくウォーミーな響きとバックで陽炎のように静かにたなびくドローンは非常に静謐感に溢れ「間」を意識した演奏は同じくミニマルな演奏を主体とするシカゴのアコースティックインスト・カルテットTown & Countryにも共鳴するようなサウンドだ。
ハープシコードの絢爛とした音色を抑制するようにストリングスの伸びやかで落ち着いた演奏が加わる。それらがまさに静謐さと幽玄さの狭間で炎のように揺らめく幻想的なサウンド・スケープを導き出すのである。
タイトルにもある「AnimaminA」は回文でもあり、またAnima-Aminaと切り離す事ができる。
Animaとはつまり「魂、霊魂」を意味し、北欧の原始宗教や古代神話などにも通ずるアニミズムに対してのスピリチュアリティーを彼女達自身がアルバム・タイトルにも込めたのかもしれない。
少なからずBjörkやSigur Rósを始めとしたアイスランドのアーティストが持つ神秘主義的な世界がAminaのサウンドにも感じられる。彼女達の場合はもう少し親和性が高い気がするけど。
来日公演でもきっと素敵な演奏を魅せてくれるはず。期待しましょう
Von
... 2006.03.12.[Sun]

■Artist : Sigur Rós
■Title : Von
■Label : Smekkleysa
■Release : 1997(Re-issue 2004)
■Sample : ♪

昨年2005年にリリースされた「Takk...」(ブログ内記事)において前作よりも更に突き抜けたサウンドと圧倒的な世界観でより多くの人の心を魅了したアイスランドが世界に誇るバンド、Sigur Rós。
来る4月にはJapan Tourでの来日も決定しており彼らのサウンドを生で体感できる事を今か今かと待ちわびている人も多い筈。
このアルバム「Von」(“希望”という意味だそうだ)はそんな彼らの処女作であり長らく母国アイスランド国内のみで流通していたものが2004年にめでたく再発されたものである。
空から舞い降りてくる幾千もの鈴のような清廉な音色でアルバムは幕を開けるのだが驚かされるのはその後の展開である。非常に重々しいドローンが地表すれすれを漂流しながらやがて雄叫びとも金切り声とも判断できないような耳を劈くノイジーな金属音がそれを切り裂くように挿入される。
これは2nd以降の美しいバンドサウンドを期待していた人にとっては驚愕の展開だろう。
ノイズ、ドローン、多重録音、フィールド・レコーディングを取り入れたサウンドは実験的側面が強く非常にアバンギャルドである。
しかし続く2曲目で気付かされる。やはりこれはSigur Rósなのだと。
誤解を恐れずに言えば彼らの音楽の半ば宗教音楽にも似た崇高さとそこから得られる高揚感はこの1stアルバムにおいて既に完成されている。
そして高純度に結晶化したその世界観とサウンドは非常に研ぎ澄まされたものであり、そこから感じられる緊張感も凄まじいものがある。特に後のアルバムでも顕著に見られるギターによるフィードバック・ノイズの持つテンションはその後の作品と比べても最も高く過剰であり背筋の凍りつくような感覚すら覚える。
「Takk...」で見せた世界が陽とするならこの「Von」はまさに陰に当たるような世界だろう。
ささくれだったインディー感と後に続いていく世界観が入り混じった非常に混沌とした作品である。
しかしSigur Rósの胎動は紛れもなくここから始まったのだ。
Frozen Ants
... 2006.03.11.[Sat]

■Artist : Subsurfing
■Title : Frozen Ants
■Label : Apollo
■Release : 1995
■Sample : ♪
砂漠に浮かぶUFOと宮殿、七色に発光するピラミッドにアンモナイトのスピーカー、そして極めつけは正面の凍りついた?蟻・・・・・何ともシュールでサイケデリックなアートワークだ。
Subsurfingは80年代後半The Orbにおいてエンジニアリングを行なっていたというGreg Hunterと日本人アーティスト・Obiこと大庭良治によるユニットだ。リリースはこの頃アンビエント・ミュージックに対しても積極的に力を入れていたR&S Recordsの傘下のアンビエント専門のレーベルApolloより。
サウンドはブレイクビーツを取り込んだこの時代特有の極めていなたく且ついかがわしいまでのトリップを求めたサイケデリック×ダブ×アンビエント作品である。まさに覚醒系のハマりアンビエント。
民族楽器のトライバルなリズムに異国情緒漂う何ともミステリアスで妖艶な歌声。縦横無尽に飛び交う浮遊感溢れる電子音にアップリフティングなブレイク・ビーツ。そしてどことなく漂う土臭さ。
まさにジャケットに描かれているようなシュールでサイケデリックで奇怪なアンビエントだ。
とにかくありとあらゆるトビの要素を取り込んだようなサウンドは平坦でどこまでも緩やかな地平が続いていくようなBrian Eno直系の正統派アンビエントサウンドとは違い常に起伏に富んだ展開と驚くような仕掛けとギミック、そして強烈な“トビ”が詰まっている。
しかしそのようなサウンドは普遍的に聴き継がれる所謂真っ当なアンビエント作品とは違い短い期間に深く聴き込み追求する反動としてそういった時期は嵐のように素早く去っていく。
そして後に残ったのは煙たい空気の立ち込めた我が家の記憶だけである。
とにかくこの時代のアンビエントを聴くと凝縮された時間と果てしないトリップの記憶がフラッシュバックのように蘇る。
何となく切ない締めくくりだけどそんな感じ。
Global Chillage
... 2006.03.11.[Sat]

■Artist : The Irresistible Force
■Title : Global Chillage
■Label : Rising High
■Release : 1994
■Sample : ♪

狂騒の前世紀、エクスタシー世代の人間をStonedさせた男Mixmaster Morris。
かのサイケデリック・グルTimothy Learyの死後の灰を火に焼べて吸った(!!!)男だ。
これはMorrisによるThe Irresistible Force名義での素晴らしくそして未だに新鮮な驚きに満ち溢れたアルバム「Global Chillage」である。
Global-Chill-Age・・・・そう、これはまさに世界中のChill-Age-Tribeの為の鎮静剤なのである。
素敵過ぎるMorrisのネーミング・センスに今でも痺れてしまう。
「Global Chillage」を始めとする2ndサマー・オブ・ラブといわれるムーブメント以降に生まれたアンビエント・ミュージックの多くはその求心力が従来の環境音楽としての機能性へと向かうのではなく音響面で更に凝った造りの作品や強烈な個性を全面に押し出した作品として作られそれまでのBGMとしてだけのアンビエント・ミュージックからは積極的に脱却しようとするサウンドが多く生まれた。それと忘れてはならないものが貪欲にトリップを求める姿勢である。
このアルバムはそんな時代のアンビエントを象徴する1枚であり、その中から生まれたアンビエント・テクノと言われるものの中でも象徴的な作品である。
煌く音の粒子が尾を引きながら緩やかな軌道を描き耳の周囲を駆け抜けていく。
深いリヴァーヴの掛かった音の狭間をすり抜けるように細やかなリズムが脈打つ。
世界を旅したMorrisらしく西欧耽美的な音色もあれば中近東辺りのいかにもギラついた音色も使用されている。繰り返されるディレイによる空間的な音使いと浮遊感に満ちた電子音の揺らぎは今にも体が宙に浮き上がってしまいそうな感覚を覚えさせる。
そしてアルバム1枚を通して繊細で美しい瞬間が幾度となく訪れる。
快楽原則に直結したトリッピーな音使いに生真面目な人間は拒否反応を起こすかもしれない。
でもそんなこと言うのは全く持ってナンセンス。
このアルバムの前に築かれた幾多の強烈で幸せなトリップの前でそんなこと言うのはナンセンスだっつってんの。です。
Numb
... 2006.03.06.[Mon]

■Artist : Numb
■Title : Numb
■Label : Revirth
■Release : 2002
■Sample : ♪
古くはNumb Sutraというユニットとして活動し現在はソロのNumb名義で日本を代表するレーベルRevirthの勃興にも携わった鬼沢卓。
かつてはドラムンベースを基軸にしたサウンドを制作していたが後の雑誌インタビュー(確か昔のremixかele-kingだった記憶が・・・)で語っていたように当時のサウンドが(自分も含め)結局は海外の模倣でしかなっかったとして早々にそのスタイルに見切りを付け数年後のこの1stアルバムでは日本人特有の独特の湿度を持ちながら鮮烈でいてまさにワン・アンド・オンリーなブレイク・ビーツサウンドを披露している。
強靭な骨格を持った変則ビートと跳ねるようなグルーヴは何ともシャーマニックで麻薬的。鋭利で突き刺さるようなインダストリアルなサウンドの渦はまさにカオスティックという言葉が相応しい。
とにかく強烈なまでに鼓膜を刺激するサウンドに仕上がっている。
メロディーというものの介在の余地が無いほどにビートが細かく緻密に敷き詰められリズムのみで驚くほどハーモニックな展開を見せている。
そして呪術的なまでに脈打つポリリズミックなドラムがナチュラルなトランス状態へ導いてくれるのだ。
アルバムのラストを飾る#10のようにリズムの打ち方はやはりかつてのドラムンベースからの影響が強く感じられるが音の質感は彼を始めとしたRevirth直系のオリジナルでストイックなサウンドであり日本的な湿度を存分に含んだ特徴的な音だ。
これは間違いなく日本でしか生まれ得ないサウンドでありその臨界点に到達する1枚でしょう。
Burnerism
... 2006.03.04.[Sat]

■Artist : Team Shadetek
■Title : Burnerism
■Label : Warp Records
■Release : 2004
■Sample : ♪
自身もレーベル、Shadetek Recordsを主宰するM. SchellとZack Tuckerによるユニット、Team Shadetekによる現在のところ最新のアルバムはWarp Recordsから2004年にリリースされた本作。
Team Shadetekは2000年前後に端を発したPrefuse 73を始めとするHip Hop×Electronica路線の期待のユニットである。
彼らのサウンドはとにかくマッシヴ。
凡百のHip Hop×Electronicaサウンドは有無を言わさず薙ぎ倒してしまうような勢いがここにはある。
休む暇なく次々と連射される痙攣気味の不規則で図太いマシンガン・ビートは腹の底まで響き渡り、まるで胃の内容物を攪乱し激しく討ちつけるような強靭なパワーを持っている。
ノイズによってズタズタに切り刻まれたメロディーは不協和音を生み出し半狂乱状態でトラックを疾走し駆け抜けていく。
そしてここには今までのHip Hop×Electronicaサウンドには欠如しがちだった不良性が存在している。洗練さや洒落た空気など一切ないがその代わり彼らのサウンドには危険な匂いと怪しい空気が充満している。
雷鳴の如く轟くビート・ラインに重低音の歪みとうねりまくるダーティなグルーヴ感はまさにPsychederic Digital Hip Hopといった所だ。
Team Shadetekは終始ハードで硬質なブレイク・ビーツを紡ぎ出す。
リズム・フリークスはきっと彼らのサウンドに満足する事だろう。








