The Night Will Last Forever

Lawrence  The Night Will Last Forever
   ■Artist : Lawrence
   ■Title : The Night Will Last Forever
   ■Label : Novamute
   ■Release : 2005
   ■Sample :




前作「The Absence Of Blight 」(→ブログ内記事)において孤独でストイックな音響ハウス作品として渋い魅力(地味とも言う)を放っていたPeter KerstenによるLawrence名義の最新作。

彼のサウンドはアルバムを通し相変わらず淡い悲壮感に溢れている。
聴いているこちらが不安になってしまいそうなほど孤独でまた体感温度の低い作品と言えるだろう。
しかしながら今作では前作に比べビートがより際立った作りで非常にリズミカルでもある。妙に跳ねたグルーヴ感にそれをまるで抑制し押し殺そうとするかのように挿入される切なく空気に溶け込みそうなほど淡いメロディー。ミニマルな展開の中でエレクトロニカ以降の音使いとアンビエンスな空気を感じさせる素晴らしいマイクロ・ハウス作品である。

サウンド自体意外性は無いが音響的には前作より凝ったつくりで一音一音に細やかなギミックや遊び心も感じられる。
前半部分では日本語の映画からと思しきセリフのサンプリングとカットアップが亡霊のように耳に纏わりつく。繰り返される日本語のフレーズと淡々と進む展開に妙な温度差を覚え、まるで実体の無い虚像を永遠と追い求めるような感覚に陥る。
Lawrenceのサウンドから感じれるのはこの「彷徨う」感覚かもしれない。
あてもなく彷徨う、出口の無い迷路、永遠と登り続ける螺旋階段、のように。


Viscous Solid

Aeroc
   ■Artist : Aeroc
   ■Title : Viscous Solid
   ■Label : Ghostly International
   ■Release : 2004
   ■Sample :




本人名義でもForce.incからクリッキー/ミニマルなダンストラックをリリースしていたGeoff WhiteがAeroc名義としてGhostly Internationalからのリリースした本作。
グルーヴィでフロア寄りのGeoff White名義の作品に比べ、こちらはかなりユルいチルモード。

Ghostly Internationalがクリック主体のサブレーベルSpectral Soundを抱え後にGeoff名義でもここからEPをリリースしてるだけあってこの作品もベースにあるのはクリッキーな音使い。
しかしながらBPMをかなり落とし丸みを帯びたビートラインにアコースティック・ギターの音色を導入し、かなりメロディアスでリラックスしたサウンドに仕上がっている。

隙間を生かしたミニマルな展開の中で静謐さを損なわずに甘くメランコリックなメロディーが緩やかな時間の中で組んず解れずを繰り返す。

このAeroc名義では過去のGeoff White作品が持っていたどことなく透明で軽やかな印象からは想像も出来なかった一面を垣間見る事が出来るだろう。
特に#11はダウンテンポにブルージィーなアコースティック・ギターが絡み合い、まるで沈む夕日を静かに臨んでいるかのような切なく哀愁溢れるトラックになっている。
それぞれの曲のタイトルからも見て取れるようにかなり情感的でロマンティックな作品といえるだろう。


Rhythm Of Snow

Yagya
   ■Artist : Yagya
   ■Title : Rhythm Of Snow
   ■Label : Force.inc
   ■Release : 2002
   ■Sample :




アイスランドのアーティストAрalsteinn GumundssonことYagyaによる1stアルバムにして唯一のアルバム「Rhythm Of Snow」は“雪のリズム”とタイトルに銘打っている通り、まさに聴く者を白銀の世界へと導く作品である。

2005年にネットレーベルSutemosのコンピ「Flow.ers」(Free MP3)にYagya名義で2曲提供していた事も密かに話題になったが、その3年前にリリースされた本作で既にその繊細ながら壮大なスケールのサウンド・世界観は完成しきっていると言っても良いだろう。

不透明に脈打つミニマルなビートは触れれば脆くも崩れてしまいそうな繊細さを持ち、空間処理を施したその残響音はどこまでも視界不良な世界を作り出しまるで濃い霧に包まれているかのような錯覚を覚える。
そして淡々と打ち鳴らされるビートが音もなく静かに降り積もる雪のようでもあり、一音一音からはまるで雪の結晶のような細やかさが感じられるのだ。

Basic Channel以降を感じさせる煙たい空間にYagyaの持つ映像的なサウンドが加わることで時に吹き荒ぶ雪嵐の如く時に静かに降り積もる粉雪のようにまさに雪の持つ様々なリズムを音楽として具現化させたようなイマジネーション溢れる情景的な作品だと言えるだろう。

咳き込みながら口から吐き出した香ばしく白い煙と濃い霧のようなサウンドスケープが溶け合う時、
目を閉じればそこに広がるのは一面白銀に覆われた眩しき世界。

雪幻を夢見るアンビエント・テクノ珠玉の作品。


Explode

Delay-AGF
   ■Artist : AGF / Delay
   ■Title : Explode
   ■Label : AGF Produktion
   ■Release : 2005
   ■Sample :




Sasu Ripatti・・・この人ほど名義によって対照的な毛色の作品を世に送り出している人も珍しいかもしれない。
大きく見て二つの名義を使い分け、Luomoでは何とも言えず艶っぽくアンニュイなハウス・ミュージックを、もう一方のVladislav Delayではエクスペリメンタルでダブやノイズを消化したアブストラクトなエレクトロニック・ミュージックを様々な作品において表現してきた。
そんな彼がDelay名義に於いて私生活でもパートナーであるAntye Greie-FuchsことAGFとコラボレーションした作品が「Explode」である。

メロディックな要素は大方排除され腰にまで響いてくる低音と暗闇の中にこだまするような残響音が閉塞的な空間の中に不穏に響き渡る。

トラック自体はいかにもBasic Channnelを通過した冷淡なダウンテンポ×ミニマル×ダブといった感じで音数をかなり絞り上げ簡素なものに仕上げてきている(実際耳を澄ませばかなりの細かく微細な音使いが聴いて取れるが)。
そしてその中をAGFによる愁いを帯びたウィスパーヴォイスが妖艶に歌い上げ、またリーディングする様が妙に情緒不安定的で、異様で、ある種独特の酩酊感を生み出している。

彼の前作Demo(n) Tracksが強烈でいながら素晴らしきアンビエント・ノイズ作品だっただけに、ヴォーカリストとの共作であるこのアルバムがDelay単独の作品よりも聴き易いといえばそうかもしれない。
しかしながら全体的にかなり沈み込むような鬱的ダウナーサウンドで聴いていると居たたまれないほどの不安感に駆られてしまう。

でもね、好きな人はとことん好きでしょ?こーいうの。
根暗な貴方にオススメします。


An Accidental Memory in the Case of Death

eluvium 2nd
   ■Artist : Eluvium
   ■Title :An Accidental Memory in the Case of Death
   ■Label : Temporary Residence
   ■Release : 2004
   ■Sample :
   myspace.com


US Indie界の良心的レーベルTemporary ResidenceからリリースされたMatthew CooperによるプロジェクトEluviumによる2ndアルバム。

とにかく美しい。
たった一言、その一言ですら陳腐に聞こえるほどに素晴らしい作品である。

本作はアコースティック・ピアノのみを使用して作られた音楽であり、詩的で繊細でいてとてもナイーブな感触の作品となっている。
そしてこれは人間の心象風景を巧みに抽出したかのような極めてヒューマニティ溢れる作品である。
まるで一人の人間の歩んできた道のりがこの数十分という時間に凝縮されたかのような錯覚さえ起こさせる。
ピアノは感情を吐露するように静かに、しかし力強く弾かれる。
そこから紡ぎ出された美しい旋律からは憂い、悲しみ、慈しみ、喜び、憤り、それらの様々な感情の振動を感じずにはいられない。

そしてそれらの振動が聴く者の心に緩やかに波及してくる。

クラシカルなピアノの響きが息を飲む程に美しく、過ぎ去っていく26分という僅かな時間を永遠と感じてしまいたくなる。

聴き終わった後、目頭が熱くなる思いに駆られた。
それほどまでに静かな感動に満ち溢れた作品である。


Elaztiq Bourbon

funckarma
   ■Artist : Funckarma
   ■Title : Elaztiq Bourbon
   ■Label : Sending Orbs
   ■Release : 2005
   ■Sample :




2005年、Kettel(ブログ内記事)/Secede(ブログ内記事)という二人のアーティストの発表した2枚のアルバムによって一躍シーンの最右翼に躍り出たレーベルSending Orbs
そのSending Orbsから昨年末に届けられた第3弾アルバムはFunckarmaによる過去にリリースされていた12インチからの音源を自身の手によってリマスター、コンパイルした「Elaztiq Bourbon」である。

それまでに本レーベルからリリースされていた2枚のアルバムが強烈なまでにファンタジックな世界観を楽曲・アートワークに至るまで完璧に表現していて良くも悪くもレーベルカラーを早々に決定付けてしまうような印象だったのに対しこのアルバムでは一転してダークで不穏な空気に支配されたアルバムとなっている。

芯の通った力強いリズム群と暗闇の中に微かに差し込む光のようなクリアーなメロディーラインが特徴的でそれに折り重なるように敷かれた壮大なシンセサウンドによるベールが曲に更なる重厚感を与えている。
また小手先も巧みに使い荒々しいだけではなく繊細な小技も効かせている。
スクラッチを更に加工して作られたような扇動的なリズムにインダストリアルで金属的なビートライン、所々聴かれる歪んだ音使いなどが美しく幽なるメロディーと融け合い、それらが暗がりの中で仄かに感じられる灯りのような世界を作り出している。

Sending Orbsから既にリリースされた2枚のアルバムに比べると強烈な個性を放っている作品ではないがどの楽曲もすこぶるクォリティーの高いIDMで流石といった仕上がり。


明け

みなさま、遅ればせながら明けましておめでとうございます。
新年のご挨拶が遅れた理由は・・・そう、呑んだくれて腑抜けになっておったのです。
今年も皆様にとって良き年でありますように、そして良き音に巡り合えますように。