Cycla
... 2005.12.30.[Fri]

■Artist : Level
■Title : Cycla
■Label : Spekk
■Release : 2005
■Sample : ♪
■Biography : *
「ミニマル音楽」をレーベル・コンセプトに据え毎度毎度、実験的/先鋭的なエレクトロニック・ミュージックを美しいアートワークとノート型のCDケースにパッケージングして届けてくれる東京のレーベル、Spekkの最新作はB.G.NicholsによるLevel名義での作品。
ピアノを素材にその音を分解/構築されて作られたという本作は息を呑むほどに美しく天上的な空気に満たされた作品である。
素材を極限まで加工する事によってその素材の持つ輪郭はぼやけてしまうかもしれないが、聴く者にとってはその曖昧さが逆に音の一つ一つに対して想像力を掻き立てられる事にも繋がり得る。
おそらくこの作品もそういった1枚ではないだろうか。
断片的にピアノの面影は感じられるものの加工によって得られたその多重的な響きがフィルターを挟んだようなくすんだリズムと重なり合い繊細な音ながらダイナミックな印象を与える。
特に#6はアルバム中のクライマックスといえるような内容で他の曲に比べ鬼気迫るような迫真の展開となっている。
残響音を施した細かに脈打つリズムに絹のような滑らかに流れていくメロディー、そしてそれら包み込むようなドローンがやがて渾然一体となり素晴らしくドラマティックな瞬間へと導いてくれる。
極北の彼方から響いてくる冷たく美しいセレスティアル・ドローンの先鋭。
Silent Night
... 2005.12.24.[Sat]

■Artist : William Basinski
■Title : Silent Night
■Label : 2062
■Release : 2004
■Sample : ♪
粉雪のように柔らかな音が舞い降りる素晴らしき静寂の世界。
「Silent Night」と題された本作は、街中に溢れ返る大げさに眩しく無機質な光の喧騒とは最もかけ離れた所で奏でられる音楽であり、またそのような場所で聴くべき音なのかもしれない。
全1曲、60分に及ぶこの「Silent Night」は全体に流れるクラシカルで厳かな空気の中に儚さを併せ持った叙情的な作品となっている。
蟲が自らの羽を擦り合わせて奏でている羽音の如き高音域のヒス・ノイズはさながら夜空に鳴り響く鈴の音のようでもあり冬の張り詰めた清らかな空気の中に寂々と響き渡る。
角を極限まで削ぎ落としたアナログな質感のシンセ・サウンドが柔和なメロディを作り出し炎のような暖かい揺らめきを以ってその鈴の音を穏やかに包み込む。
それらが生み出す瞑想的なドローンによる世界は粉雪のように柔らかな音が舞い降りる素晴らしき静寂の世界である。
全ての空気が澄み渡り、全ての夜が寝静まる。
そんな夜にはプレイヤーのヴォリュームをいつもより少し上げてこの静寂の世界にゆっくりと沈み込むとしよう。
もち一人で・・・・・・アハ
Our Memories Of Winter
... 2005.12.20.[Tue]

■Artist : Norken
■Title : Our Memories Of Winter
■Label : Combination
■Release : 2005
■Sample : ♪
Hydrogen Dukeboxから"Metamatics"としての作品リリースでも知られているLee Norrisによる別名義Norkenによる最新アルバム。
こちらのNorken名義ではMetamatics名義に比べ4つ打ちビートを基調としたクリック・ハウス的アプローチの作品を発表している。
「冬の記憶」と題されたタイトル通り透明感溢れる清らかな音使いとエレクトリックでクリッキーなビートラインが特徴的で妙に体感温度の低い音となっている。
程よくグルーヴィでありながらアトモスフェリックな空気感がフロアとベッドルームの間の境界線を巧みに行き来するようだ。
空間処理も冴えていて輪郭線のくっきりとしたビートの中をアンビエンティッシュで流麗な上モノの残響音が心地よく響き渡る。
この辺りは彼方に広がっていく雪原にこだまするような音楽といった感じ。
しかし聴き進むごとに印象はやや変わり、中でも女性ボーカルを起用した#4、#7などは他のトラックがやや冷淡な印象を受けるのに比べ抑制の効いた気だるいようなボーカルが妙にセクシーで妖艶な魅力を放っている煙たい作品となっている。
#6などはさながらエレクトリック・ジャズといった感じでIan O'Brienを始めKanzleramt辺りにも通ずるフュージョニックなテクノを得意とするサウンドのファンにもオススメ。
10 SELECT+5 , 2005
... 2005.12.17.[Sat]
10 SELECT +5, 2005
2005年も残り十日余りになってきましたね。
てことで今年のベストです。
10枚じゃ、ちと少なかったんでプラス5枚で15枚選んでみました。
新譜・旧譜関係なく選んでみたけど結局新譜ばかりになりました。
ってことは2005年は当たり年だったってことかな?
で、振り返ってみると・・・・
2005年も残り十日余りになってきましたね。
てことで今年のベストです。
10枚じゃ、ちと少なかったんでプラス5枚で15枚選んでみました。
新譜・旧譜関係なく選んでみたけど結局新譜ばかりになりました。
ってことは2005年は当たり年だったってことかな?
で、振り返ってみると・・・・
Adapter
... 2005.12.13.[Tue]

■Artist : You Dee
■Title : Adapter
■Label : Onitor
■Release : 2003
■Sample : ♪
You DeeはSven Reiger、Peter Hansen、Stefan Wustの3人から成るユニットで最近では2ndアルバムも発売しネットレーベルAutoplateからもFREE MP3による作品を発表している。
今作はKOMPAKTが全面的にディストリビューションを行なっている同じくドイツに拠点を置くレーベル、Onitorからリリースされた彼らの1stアルバム。
「水」にインスパイアされた作品ということだけあって清涼感と清廉さの漂う気品に溢れた作品になっている。
一聴するとドイツ特有のクールネスなサウンドだと感じられるかもしれない。
しかし聴き進むごとに味わい深い作品であると感じられるだろう。
浮遊感に満ちた空間系のシンセサウンドが徐々に奥行きを持ちながらそのテリトリーを広げていく。
その中を控え目ではあるが有機的なメロディーがまるで静まりかえった水面にぷくぷくと顔を出す水泡のように湧き出てミニマルな展開の中を波紋のように広がっていく。
そしてグリッチーなリズムを繋ぎ止めるように挿入されるその淡いメロディーが曲ごとに様々な表情のサウンドを見せてくれる。
取り立てて派手な曲や目だった展開を聴かせる曲がある訳ではないが時折僅かにちらつくユーモアに溢れた音使いから彼らの持つポップな一面を垣間見る事が出来るだろう。
全体的に静的な雰囲気漂うミニマル・アンビエントの秀作。
Takk . . .
... 2005.12.10.[Sat]

■Artist : Sigur Rós
■Title : Takk...
■Label : EMI
■Release : 2005
■Sample : ♪
■live in reykjavík 2005 : *

Sigur rosのおよそ3年ぶりとなる4thアルバム。
とにかく開放的で素晴らしい。
そして地に足のついた確かなサウンドである。
それまでの作品がまるで自身の内なる部分に焦点を合わせ多少情緒不安定ながらも、そこに究極の美を見出そうとしていたのに対し今作では突き抜けるような開放感とまさに溢れんばかりの希望とポジティブなエネルギーに満ち満ちた作品になっている。
ボーカル、jónsiの歌声は相変わらず美しい。
時に天使の羽音のように優しく繊細でいながら、またある時には雷鳴の如き咆哮するような荒々しさも併せ持っている。
それはアイスランドの自然が持つ全てを包み込むような慈しみに溢れた愛であり、また何者をも寄せつける事を許さない厳しさでもあるかのようだ。
ドラムスはよりタイトにバンドサウンドの核を担う。
轟音ギターも冴え渡り効果的に使われることで静と動のバランスを保っている。
ピアノによる叙情的なフレーズ、ホーン系の連隊、伸びやかなストリングスがより多幸感を煽り気分を盛り立てる。
そしてボーカルの透き通ったファルセット・ボイス。
まさにその全てが澄み切った青空に響き渡る地上からのファンファーレのように感じられる。
かつて母体の中で静かに胎動していた小さな生命が地上に産み落とされ今、確かな足取りでその世界を見渡しているのではないだろうか。
そしてきっと彼らはこう言うのだろう「Takk...(ありがとう)」と。
Okie Dokie It's The Orb On Kompakt
... 2005.12.09.[Fri]

■Artist : The Orb
■Title : Okie Dokie It's The Orb On Kompakt
■Label : KOMPAKT
■Release : 2005
■Sample : ♪
■Interview : *
長らくThe Orbと共に香ばしい煙をくゆらせてきた人にとって近年の彼の作品には正直、身も心も委ねてしまう事にいささかの抵抗があったのかもしれない・・・
しかしながらThe Orb結成初期からの盟友Thomas Fehlmannとともに作り上げたこのアルバムにはかつてのユーモアと実験精神に満ち溢れた頃の輝きがKOMPAKTというレーベルが持つ現代的なエッセンスを注入することによって素晴らしい化学変化をおこし最高の作品を我々の前に届けてくれる事となった。
以前のような奇天烈さは無いがその代わりここには酸いも甘いも全てを噛みしめてきた末に辿り着いた眩いまでのトリップがある。
ベースラインはいつも以上に重くそして煙たい。
KOMPAKTらしいミニマルなビートにThe Orb流のスパイスを絡めてダビーなアンティパストでアルバムは幕は開ける。
スリリングなメロディと背後から忍び寄る不穏な空気。
メインディッシュの煌く様な上モノは瞬く間にあたりの空気を七色のアラベスクへと変化させる。
そして後半は緩やかに流れるような展開へシフトしていき天上的なAMBIENTで穏やかな表情となってアルバムは締めくくられる。
様々な要素を内包しその間を自由に泳ぎ回る御大の姿はさながら音楽のメルティング・ポットそのものであり本作も非常にカラフルな印象で陰と陽の面が互いに折り重なるように展開されていく。
シリアスな表情を見せたかと思うと次の瞬間にお茶目な笑顔を見せてくれる。
The Orbはそうして様々な時代に様々な笑顔を我々に与えてくれた。
Alex Patersonはこのアルバムに続くように、かつてのもう一人の盟友YOUTHとのアルバム制作に取り掛かっているようだ。リリースは来年でレーベルは何とDragonfryから、とのこと。
最後にこのアルバムをリリースしたKOMPAKTとThe Orbの復活に祝杯をあげたい。「チン!」
Haunt Me,Haunt Me Do It Again
... 2005.12.04.[Sun]

■Artist : Tim Hecker
■Title : Haunt Me,Haunt Me Do It Again
■Label : Substractif
■Release : 2001
■Sample : ♪
カナダはモントリオールを拠点に活動するサウンドアーティストTim Heckerの本人名義による傑作の呼び声が誉れ高い1stソロアルバム。別名義でもあるJetoneではForce.incからクリッキーなフロア志向の作品をリリースしているがこの本人名義では徹底したアンビエント/ノイズサウンドの作品を発表している。中でも本作はその後の本人名義作品へと続く指針となり得るサウンドである共に最も感傷的で穏やかな表情の作品ではないだろうか。
本作「Haunt Me,Haunt Me Do It Again」は20ものトラックから構成されているのだが、しかしながら一連の統一されたイメージをもって作品は展開されていく。アルバム全体を覆い被さるようなドローンが時に繊細に、また時に重圧的にのしかかり、さながら冬の張り詰めた空気を表現しているようでもある。
ザラついたノイズの中を極限まで加工された生音による微かなメロディがまるで宙を舞うようにたおやかに響き渡る。そしてそのメロディは徐々に変化を遂げていくドローンの中を溶け合いまた分裂を繰り返しながら冬のクリアーで、しかしながら突き刺さるように冷たい空へと拡散していく。
中でもアルバム後半の流れはスリリングでありながらとにかく美しい。
砂嵐のようなノイズにドローンによる重層的な厚みと曖昧で焦点がボヤけてしまったような柔らかなメロディが絡み合い緊迫感と安らぎの鬩ぎ合いの中で聴く者の意識は次第に揺らめいている。
自らの手の中から消えてしまいそうになる「それ」を必死に繋ぎ止めようとする、その中でいつしか僕は夢を見ていた。
そこには冬の蒼く澄み切った空に「それ」を追いかけるようにして吸い込まれてしまう僕がいた。
The Absence Of Blight
... 2005.12.03.[Sat]

■Artist : Lawrence
■Title : The Absence Of Blight
■Label : Dial
■Release : 2003
■Sample : ♪
Stenとしても活動するPeter KerstenによるLawrence名義の本作。
リリース元であるDial RecordsはKompaktがディストリビューションを行なっている。
Sten名義がややフロア寄りの作品をリリースしているのに対してこのLawrence名義では4つ打ちのマイクロ・ハウスを基調としながら全体にアンビエンティッシュな空気漂うディープ・リスニング向けの作品が多いのが特徴。
悲壮感に満ち溢れたメロディーと半ばストイックなまでに淡々と打ち鳴らされるマイクロ・ビート。
デトロイト・テクノから影響を受けたと本人も語っているだけあって上モノは流麗で且つ浮遊感を感じさせ、隙間を意識したビートの中に美しい空間を作り上げている。
しかしLawrenceの音は徹底的に孤独で悲しい。
音の隙間からこぼれ落ちた感情は紛れもなく哀切の念に満ちている。
それは薄暗い曇り空の如く全てを飲み込んでしまいそうな虚ろな世界でもあり、また身を突き刺すように吹き荒ぶ冬の風のようでもある。
ジャケットのアートワークに映し出されたような荒涼とした灰色の空気がアルバム全体を支配しているが、しかしそこには美しさも確かに存在している。
それはいかにも西欧人が好みそうな中世的で何処かしら陰のある美。
孤独な世界に魅せられた儚くも美しき世界。








