Window
... 2008.08.22.[Fri]

■Artist : Monos
■Title : Window
■Label : ICR
■Release : 2003
■Sample : ♪
Colin PotterとDarren Tate、この二人によるユニットMonosは英国の実験音楽/ドローン/アンビエントといったエクストリームな音楽シーンの中でも名実ともにおそらく最高峰クラスに位置するユニットの1つではないだろうか。それぞれの活動もソロや別ユニットなど多岐に渡るが、Colin Potterは古くからサウンド・エンジニアとしてNurse With Woundを始めとする様々なアーティストの作品に数多く携わっており、またDarren TateはAndrew ChalkとのユニットOraとしての活動でも知られている。
今作はColin Potter主宰のICR(Integrated Circuit Records)より2003年にCDRとしてリリースされた作品であり、数あるMonos諸作の中でも最高傑作と誉れ高い作品『Window』である。
#1“That Dream”、#2“ Alone”というおよそ39分と25分の長尺曲2曲で構成されたこの作品ではDarren Tateがフィールド・レコーディング、そしてColin Potterがプロセッシングとミックスを担当しているのだが今作では全編に渡ってDarren Tateによって採録されたフィールド音源が余すことなく使用されている。序盤から水のせせらぎに鳥のさえずりが柔らかく響き渡る清廉で透明感のあるアンビエント・サウンドを展開しており、まるで朝靄の掛かった深い森の中へ迷い込んだような錯覚に襲われる非常に幻想的なサウンドとなっている。また自然音と具体音が緩やかに交錯する中、Colin Potterによる職人的な感性で紡ぎ出されたドローン・サウンドは、全てを包み込む大らかな風のような雄壮な表情を持っており、それらは時に繊細にまた時にダイナミックに、まるで自然の持つ表情1つ1つと呼応するかのように自在に変化を遂げてゆく。
今作『Window』はMonosの他の作品に比べ非常に穏やかで、またゆったりとした印象の作品となっているとは思うが多くの作品でも度々感じられる自然音(または自然)とエレクトロニクスの関係性や親和性、折衷感覚はこの作品に最も強く、また明確に表れているのではないだろうか。最高傑作と謳われるのも頷ける素晴らしい作品である。
Inter-Dimensional Music
... 2008.08.20.[Wed]

■Artist : Iasos
■Title : Inter-Dimensional Music
■Label : em records
■Release : 2005(Original Release/1975)
■Sample : ♪
Iasosは1970年代から現在も活動を続けているアーティストであり“ニュー・エイジ・ミュージック”の始祖とも呼ばれる人物である。1947年ギリシャに生まれその後家族でアメリカ合衆国へ移住、60年代後半には当時フラワー・ムーヴメントの中心地であったサンフランシスコへと生活の拠点を移しそこから彼の様々な創作活動は始まった(更に詳しいバイオグラフィー等はこちらで読むことが出来る)。
本作『Inter-Dimensional Music』は1975年にリリースされたIasosによる1stアルバムであり、当時すでにその終焉を迎えていたフラワー・ムーヴメント/ヒッピー・カルチャーから派生した新たな運動、ニュー・エイジ・ムーヴメントの中でも重要な意味を持つニュー・エイジ・ミュージックの始まりを告げる1枚とも言われている(2005年、貴重盤の再発を行う大阪のレーベルem recordsよりCDで再発)。
Iasosの音楽を語る上で重要なのは彼が“ヴィスタ”と呼んでいる彼自身に起こった超常体験である。簡単に説明すると、それはある時、自分自身の中で高次元の光の生命体“ヴィスタ”の存在を感じ彼はそのヴィスタの啓示により音楽を創作している、というものだ。それに加え、以前より彼の頭の中では美しく不思議な音楽が流れ始めていたのだが、彼はそれを“パラダイス・ミュージック”と名付けていた。
これらの話を信じる、信じないは自由だがIasosにとってこれらの体験が彼の作品を創作する上での大きな契機であり、またモチベーションとなっていることは事実である。
幼少期より音楽教育を受け、またクラシック音楽の素養も持っていたIasosはこの1stアルバムでも殆どすべての楽器を彼自身が演奏をし、録音も自身のボートハウスにて行っていたという。そうして創り出された音楽は、まさに前述したような彼の頭の中で流れ出した“パラダイス・ミュージック”とも呼べるような天上的な音色に彩られた極彩色の眩いサウンドであり、(録音状態に拠るところも大きいとは思うが)非常にロー・ファイな質感の柔らかな暖かみのある音楽に仕上がっている。そしてまた忘れてはならないのが、この作品には非常にサイケデリック・ミュージックとしての側面が色濃く表れているという点だ。様々な楽器による演奏は多重録音される事によって次第に恍惚とした表情へと変わっていき、またエキゾティックで不思議な旋律が華麗に飛び散ったベルの中を艶やかに舞う。この作品の中でも特に印象深いIasos自身が演奏するエレクトリック・フルートによって紡ぎだされた極上に美しい音色は聴く者に果てのない幸福感と高揚感を与えるくれるだろう。“ニュー・エイジ・ミュージック”という言葉を聞いて多少なりとも抵抗のある方にもIasosの作品は是非聴いて頂きたい。素晴らしき旅へとあなたを導いてくれるだろう。
Sound of Sleep by Yogurt from Upsets
... 2008.05.03.[Sat]

■Artist : Yogurt
■Title : Sound of Sleep by Yogurt from Upsets
■Label : Upsets Recordings
■Release : 2003
■Sample : ♪

1998年にDJ Uとのユニット、Upsetsとしての活動をスタートし幾つかの作品を発表すると共に屋内、屋外を問わず様々なパーティーでDJを行い、2000年以降に生まれたこの国のオルタナティブでフリーフォームなパーティー・シーンを代表するDJの一人でもあるDJ Yogurt。2001年にはUpsetsとしてまるで都会に湧き出でたオアシスの如き水流の音を大胆に取り入れた美しきビートレス・アンビエントの傑作盤『Sound of Sleep』を発表しているが、本作はUpsetsとしてではなくYogurtのソロとしてその続編ともいえる素晴らしい内容の作品を再び“副作用のない睡眠薬”として我々の前に届けてくれた。
過去にUpsetsとしてリリースした『Sound of Sleep』が比較的抽象度の高い作品だったのに比べ、本作ではノンビートを主体としながらも時折現れるサックスやアコギを中心とした生楽器による甘くメロウな旋律と電子音によるしなやかで美しい揺らぎを織り込んだメロディアス且つ非常にリラックスした雰囲気の作品となっている。決してシリアスになり過ぎず、誤解を恐れずに言うならば“ポップ”とも取れるようなどことなく陽気で開放的で緩やかなオプティミズムがこの作品の端々からは滲み出ている。
特に、アルバムを聴き進むごとに“睡眠薬”というよりも“清涼剤”とも言えるような清廉で淀みない音の一粒一粒が体と意識の隅々にまですーっと浸透してゆくようでとても爽やかで気持ちが良い。また前作同様、アルバムは曲間を空けずノンストップで展開してゆく構成となっており、途切れることなく溢れ出るその気持ちの良い音の連続に包まれて眠ると何だか幸せな夢が見れそうな気分になってくる。
アルバムに描かれた絵は何だろう・・・僕はこの絵を大海にポツンと浮かんだ小島のように想像した。波の流れに身を任せ辿り着いたこの島ではきっと楽園のような気持ちの良い音が聴こえてくるんだろう。
Olento
... 2008.03.01.[Sat]

■Artist : Ø
■Title : Olento
■Label : Sähkö Recordings
■Release : 1996(Repressed/2005)
■Sample : ♪
Pan SonicのMika Vainioによる変名の1つであり代表的な名義でもある“Ø”による1996年リリースの作品『Olento』(2005年に他のØ名義初期作品と共に再発)。リリースはPan Sonic最初期の作品やMikaによるソロ作品を多くリリースしているフィンランドのSähkö Recordingsより。Ø名義ではPan Sonicで聴けるようなノイジーなサウンドよりも、比較的フロアを意識したような4/4ビート作品から初期電子音楽のようなミニマルで実験的な音響作品、そしてアンビエントやドローンといった静謐で抽象性の高い作品までをその唯一無比なオリジナリティーとストイックなまでの実験精神で表現している。
今作でもØ名義らしい全く人肌を感じさせない極低温の冷え切ったウルトラ・ミニマル・サウンドを展開し、聴く者の感覚器官を一瞬で麻痺させるような絶対零度の圧倒的な音響世界を繰り広げている。冒頭、オルゴールが奏でる物悲しい旋律で幕を開け、やがては角を落とし丸みを効かせた微細ノイズに虚空の永続瞑想的持続音が響き渡る。本作も他のØ名義の作品同様、極めて中毒性の高い麻薬電子音が浮遊しそれらが周囲の空間をゆっくりと捻じ曲げてゆくような非常にトリッピーな作品である。更に規則的な4/4クリック・ビートからポリリズミック・ビートへの変換−今作ではこのポリリズムという形態を取り入れ、幾つかのリズムが互いに鬩ぎ合う中で生じた奇妙なズレが、変則的でそしてまた奇妙なグルーヴを生み出している。終盤ではダブの手法のみを抽出し研磨したØ流のミニマル・ダブで更にディープに霞み掛かった空間へと変化し、ラストは再び冒頭のオルゴールの音色で幕を閉じる。
この作品においてもMika Vainioのその偏執的/偏狂的とも取れる程の音響美学は聴く者を見事に圧倒するだろう。そしてまた驚くべきは10年以上前の1996年のリリースにも関わらず今現在も、そしておそらくこれから10年後にも全くの時代性を感じさせないであろう、いつの時代にも決して属さず当て嵌まる事のない「非時代性」がMika Vainioの作る音楽には一貫して存在しているのである。
Plays Non Standards
... 2008.02.16.[Sat]

■Artist : nsi.
■Title : Plays Non Standards
■Label : Sähkö Recordings
■Release : 2007
■Sample : ♪
90年代初頭よりアンビエント/テクノユニット、Sun Electricとして多くのクラシックを世に送り出してきたMax Loderbauerと、同じく90年代よりPink Elln等の名義で活動を行ってきたTobias Freundによって結成された“Non Standard Institute”を意味するユニット、nsi.。2007年にリリースされた今作は彼らにとって1stアルバムであり、Mika Vainio(ex-Pan Sonic)のソロ名義であるØやPhilusといった異形のウルトラ・ミニマルな作品でお馴染みのフィンランドのSähkö Recordingsよりリリースされた。
本作『Plays Non Standards』は“23 piano pieces”から成る作品であり各々がおよそ1〜4分という小曲で構成されている。Max Loderbauerがピアノを弾き、そしてTobias FreundがTR808やDEP5といったヴィンテージ機材を用い全曲を一発録りしているそうで、アルバム全体を覆う不穏な緊張感とピアノによる静謐で美しい音色が、特異な間を持って鬩ぎ合う何とも不思議な空気感と実験的な要素を併せ持った作品となっている。アルバムを通しての明確なテーマ性などはやや希薄に感じられる小曲集といった趣きの作品だが、それぞれが1〜4分という短い構成の中でピアノの「響き」や「間」を生かした演奏が非常に印象的である。ミニマルなピアノ・アンビエントから低重心のドローンまでをアヴァンギャルドな香りを絶妙な間合いで掻い潜りながら表現した実験的でありながら美しい作品である。
From Stills to Motion
... 2008.02.02.[Sat]

■Artist : Adam Pacione
■Title : From Stills to Motion
■Label : Infraction Records
■Release : 2007
■Sample : ♪

Adam Pacioneはデトロイト出身、現在はテキサスに活動の拠点を置くサウンド・アーティストである。元々はフォトグラファー/グラフィック・デザイナーとしてその活動のキャリアをスタートさせたが1999年からは本格的に楽曲制作を始め、これまでに数枚のCD-R作品と2005年には1stアルバムにあたる『Sisyphus』をElevator Bathというレーベルよりリリースしている。今作は、毎度美しいアートワークと共に非常に水準の高いアンビエント/ドローン・サウンドを世に送り出しているInfraction Recordsより2007年にリリースされた2ndアルバム『From Stills to Motion』である。因みに本作のインナー・ブックレットにはフォトグラファーである彼自身の撮影したアートワークが幾つか掲載されている。
まずアルバム冒頭から#1“Available Light”そして続く#2“Good Morning Mockingbird”とスケール感の滲み出た非常に壮大なアンビエンスと美しいメランコリアが同居したサウンドを聴かせてくれる。静寂に差し込む暖かい光、そして柔らかなドローン・サウンドに包容された穏やかな日常。まるで自然の中で絶えず繰り返されてきた優美で、しかし時に猛々しいドラマティックな一瞬を接写するかのようにAdam Pacioneは丁寧に描き出しそして聴く者の心に鮮やかに映し出す。
微細なノイズやエレクトロニクスを絡めながらも、その手触りはあくまでオーガニックで柔和な印象である。しかし1、2分の小曲から13分にも及ぶ大曲まで、そのどれもに1本芯の通った徹底された世界観と美しく壮大なサウンドスケープが存在しており、そのことによってこの作品を柔和な印象だけに止まらずより強くしなやかなものと感じさせてくれている。特にラストを飾る13分にも及ぶ大作“Zenith”は聴く者を圧倒するかのような重厚美麗持続音が展開されており“天頂”を意味するそのタイトル通り、ある種の神々しさと圧倒的なカタルシスを内包したラストを飾るに相応しい楽曲となっている。
Rainbow Dome Musick
... 2008.01.13.[Sun]

■Artist : Steve Hillage
■Title : Rainbow Dome Musick
■Label : Virgin Records
■Release : 1987(oginal LP release-1979)
■Sample : ♪
1970年代初頭より自身のバンドKhanやDavid Allen率いるサイケデリック・プログレッシブ・ロックバンドGongのギタリストとして活動し、現在に至ってはGongの作品にも参加していた妻であるMiquette Giraudyと共にテクノ/トランス/ハウスといったダンス・ミュージック主体のユニットSystem7として活動する、正にサイケデリック・ミュージック界の生き証人、サイケデリック・ミュージックの過去-現在-未来を繋ぐと言っても過言ではない御大Steve Hillageによる79年のソロ作『Rainbow Dome Musick』。
本作は元々1979年のロンドンにて行われた“Mind-Body-Spirit Olympia”というフェスティバルに於けるRupert Atwill出展の作品“Rainbow Dome”内で流すためのサウンド・トラックとして制作された、云わば企画盤であった。しかし90年代以降のクラブ・ミュージックの勃興とそれに伴うアンビエント・サマーと呼ばれたムーブメントの中でHillageの奏でる奔放なる音色とエレクトロニクスを用いた先鋭的なサウンドは当時憂き目を見た多くの革新的な作品と共に再評価の対象となった。
およそ20分にも及ぶ2曲の大作から構成された本作はエレクトロニクスを大胆に導入し、その後に結成するSystem7への布石とも取れるような快楽指数の高いサウンドで極上のトリップを約束してくれる素晴らしいアンビエント作品となっている。それは正にタイトルが示すような虹から零れ落ちた極彩色の音色が生み出す全く新しい“Space Age Music”である。ムーグ・シンセサイザーの伸びやかで悠大なる旋律とフェンダー・ローズの暖かい煌き、水流が静かに溢れ出しチベタン・ベルの瞑想的な音がこだましてゆく。中でも#1“Garden Of Paradise”の終盤辺りから聞こえてくるHillageの奏でるギターの音色は正に極楽を思わせるような幸福感に満ちた楽天的な響きを持っており、天上にスーッと吸い込まれてしまいそうな程に美しく狂おしい。同時代のギタリストといえばもう一人有名なジャーマン・プログレッシブ・ロック界のManuel Göttschingがいるが、彼の代表作でありアンビエント/テクノ界の永遠のクラシックス『E2-E4』が現在でも多大なる評価を得ているのに比べ、この作品に関する知名度や評価は『E2-E4』に比べると正直のところ低いと言わざるを得ない。もし『E2-E4』のサウンドに魅了されたがこの作品は未聴だという方が居られれば是非こちらの『Rainbow Dome Musick』も聴いて頂きたい。きっとあなたを未だ見ぬ素敵な世界へ連れて行ってくれるだろう。








